コロナ禍を機に観光業を「解毒」せよ(アレックス・カー)
AWAKE FROM ILLUSION
これまでも繰り返し伝えてきたことだが、インバウンドの数は問題ではない。政府が目指す観光客4000万人でも、いずれ到達するであろう6000万人でも、日本は受け入れられるはずだ。しかし、観光産業にはマネージとコントロールが不可欠である。残念ながら、これまでの議論は数の大小にとどまっている。
もしオーバーキャパシティーを無視して受け入れを続ければ、歴史遺産の価値は損なわれ、品格も薄れる。これには、入場制限、予約システム、入場料の引き上げなどの管理方法がある。観光客の理解を促すための情報発信はいろいろ考えられるが、近年、神社仏閣の境内は無秩序で無頓着な観光管理により、見事なまでに「汚染」されている。関係者で勉強会を開き、専門家の意見を取り入れながら解決策を探っていけば、こうした汚染も抑えることができる。
押し寄せる観光客の受け入れに追われていた行政や文化施設も、コロナ危機で環境は激変した。経済的に追い詰められてはいるが、今を貴重な暇と捉え、観光業のマイナス面を見つめ直す絶好の時期を迎えている。
今後の復興を見据え、健全な観光のマネージとコントロールの技術を導入するチャンスである。このチャンスを逸し、単純に「以前のように数を増やそう」とすれば、またも錯覚の連鎖につながりかねない。
<2020年5月5日/12日号「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>
【参考記事】緊急ルポ:新型コロナで中国人観光客を失った観光地の悲鳴と「悟り」
【参考記事】外国人観光客を図に乗らせている、過剰な「おもてなし」やめませんか
2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。