最新記事

ポストコロナを生き抜く 日本への提言

コロナ禍を機に観光業を「解毒」せよ(アレックス・カー)

AWAKE FROM ILLUSION

2020年5月7日(木)16時50分
アレックス・カー(東洋文化研究者)

これまでも繰り返し伝えてきたことだが、インバウンドの数は問題ではない。政府が目指す観光客4000万人でも、いずれ到達するであろう6000万人でも、日本は受け入れられるはずだ。しかし、観光産業にはマネージとコントロールが不可欠である。残念ながら、これまでの議論は数の大小にとどまっている。

もしオーバーキャパシティーを無視して受け入れを続ければ、歴史遺産の価値は損なわれ、品格も薄れる。これには、入場制限、予約システム、入場料の引き上げなどの管理方法がある。観光客の理解を促すための情報発信はいろいろ考えられるが、近年、神社仏閣の境内は無秩序で無頓着な観光管理により、見事なまでに「汚染」されている。関係者で勉強会を開き、専門家の意見を取り入れながら解決策を探っていけば、こうした汚染も抑えることができる。

押し寄せる観光客の受け入れに追われていた行政や文化施設も、コロナ危機で環境は激変した。経済的に追い詰められてはいるが、今を貴重な暇と捉え、観光業のマイナス面を見つめ直す絶好の時期を迎えている。

今後の復興を見据え、健全な観光のマネージとコントロールの技術を導入するチャンスである。このチャンスを逸し、単純に「以前のように数を増やそう」とすれば、またも錯覚の連鎖につながりかねない。

<2020年5月5日/12日号「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>

【参考記事】緊急ルポ:新型コロナで中国人観光客を失った観光地の悲鳴と「悟り」
【参考記事】外国人観光客を図に乗らせている、過剰な「おもてなし」やめませんか

20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国はパナマ運河を中国の影響力から取り戻す=ヘグセ

ワールド

韓国政府が自動車業界向け緊急支援策、トランプ関税の

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米株安の流れ引き継ぐ 米

ビジネス

TSMC、10億ドル超の罰金に直面も 米輸出規制調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中