トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国
2019年8月26日、ワシントン・タイムズは"U.S. needs to respond to rising Chinese influence in the United Nations"(アメリカは国連で増大している中国の影響力に対処しなければならない)という警鐘を鳴らしている。
この傾向はコロナ前から着々と進めれてきているのだが、その事実に注目する日本人は少ない。トランプもこの事実に目を向けるべきで、テドロスや習近平を非難するのは良いが、拠出金を停止して何が起きるのかを大局的視点から分析した上で手を打たなければならないのではないだろうか。
ましてやコロナが過ぎていった後の「アフターコロナ」の世界を考えてみて欲しい。
中国はいち早くコロナの大拡散から抜け出して、今やコロナ禍にまみれ苦しんでいる国々に医療物資を提供したり医療支援チームを派遣したりなどして「コロナ支援外交」を展開している。対象国は一帯一路沿線国を中心に130ヵ国に及んでいる。
アフターコロナで、支援を受けた国々が「中国を糾弾する側」には立たないだろう。
70日以上に及ぶ完全な都市封鎖により経済的に大きな打撃を受けたであろう中国は、しかしその分だけいちはやくコロナから抜け出して経済復帰もほぼ100%に達しており、今もなお感染者が爆発的に増えているアメリカ経済を凌いでいく可能性もある。
習近平が全世界に拡散させたコロナ禍を通して、中国は「アフターコロナの世界新秩序」をもう組み立てようと虎視眈々と狙っているのである。
トランプのWHO拠出金停止は、中国が目論む新世界秩序を決定的に加速させる危険性を孕んでいる。慎重に注視しなければならない。
(なお、悪いのは中国共産党という言論弾圧をする一党支配体制であって、少なからぬ中国の一般庶民はむしろ犠牲者であることを付言しておきたい。)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。