最新記事

北朝鮮

北朝鮮当局者、新型コロナの感染確認を認める

North Korea Has Reportedly Confirmed Coronavirus Cases for First Time

2020年4月21日(火)19時18分
スー・キム

北朝鮮は今も公式には国内感染者はいないとしている(写真は2015年、平壌の地下鉄) REUTERS/Damir Sagolj

<世界最高の医療のおかげで感染者ゼロと主張してきたが、3月末のコロナ対策講演会で初めて、感染者が複数確認されたことを住民に認めていた>

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は4月17日、北朝鮮の当局者が3月下旬頃に、国内の3つの地域で新型コロナウイルスの感染者が報告されたことを認めていたと報道した。

北朝鮮は対外的には感染者の存在を認めておらず、国家衛生検閲院の朴名帥院長は4月1日にAFPの取材に対して、「これまでのところ、我が国では新型コロナウイルスの感染者は一人もいない」と主張。「我々は北朝鮮に入国する全ての人について検査や検閲を実施し、徹底した消毒作業を行ってきたほか、陸・海・空の全ての国境も閉鎖するという予防的措置を取ってきた」と述べていた。

だが実際には、北朝鮮政府の複数の当局者が3月末に一般市民に向けて新型コロナウイルスに関する講演を行い、同国は世界で最も感染者の数が少ないと主張していたという。RFAが北朝鮮北部にある両江道の住民(匿名)に聞いた話として報じた。

この住民はRFAに対して、政府当局者が同地域の全ての住民を対象に「元帥様の方針貫徹のために新型コロナ防疫プロジェクトに団結して取り組もう」と題した講演を行ったと説明し、「講演者は、国内で複数の感染者が確認されたと述べた」と語った。

「3地域だけのはずがない」

政府当局者は、北朝鮮国内で感染者が確認されているのは、平壌と黄海南道、咸鏡北道の3つの地域のみだと述べたという。だがこの住民は「地図を見ると、咸鏡北道は一番上に、黄海南道は一番下にあり、平壌はその中間にある。それなのに、感染者がこの3カ所でしか出ていないなんて信じられない」と語っている。「ウイルスが国の最北端から最南端まで広がったなら、もう国内の全ての地域に広がっているはずだ」

さらにこの住民は次のように語っている。「政府の当局者は、私たちが朝鮮労働党の検閲ガイドラインをきちんと守らなかったために、経済に深刻な損害がもたらされたと言っていた。そして、さらなる損害を阻止するために、一丸となって新型コロナウイルスとの戦争に勝利しようと呼びかけた」

またこの人物によれば、この政府当局者は、北朝鮮には「世界で最も優れた医療制度が整っているため、世界で最も感染者が少ない」とも述べていたという。

また別の情報筋がRFAに語ったところによれば、講演会は平壌でも実施され、国内の感染状況については両江道での講演会と同じ説明が行われた。

「講演者は私たちに、優れた医療制度と医療政策のお陰で、感染例の最も少ない国に暮らしていることを誇りに思うべきだと言っていた」とこの情報筋は述べている。

<参考記事>新型コロナウイルス、なぜ再び陽性になる? 韓国で進む研究と新たな疑問
<参考記事>国連「アフリカ、新型コロナウイルスで30万人死亡・2900万人が極度貧困の恐れ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中