新型コロナが握る米大統領選の行方──トランプの再選戦略は
The Coronavirus Campaign
トランプの定例会見は大変な注目を集めている。3月23日の会見をケーブルテレビで見た人は実に約1220万人。さらに主要ネット局で数百万人が見ている。
危機的な状況が進むにつれてトランプ陣営は、選挙専門家が言う「アーンド・メディア」(自陣営の発信ではなく、既存メディアによる発信やSNSなどを通じた市民のメディア活動)の大きな恩恵にあずかっている。陣営では会見の視聴者が減り始めない限り、わざわざ選挙CM(こちらは「ペイド・メディア」と呼ばれる)を出さなくてもいいと考えている。
さらにトランプ陣営は、トランプがホワイトハウスから長時間にわたって熱弁を振るえば、コロナ禍のために集会も開けないバイデンが自宅の地下室から動画で支持を訴える姿とは全く対照的に映り、自陣営に有利に働くとみている。バイデンの戦いぶりは「笑えるほどお粗末だ」と、あるトランプ陣営関係者は言う。
だが方針転換したトランプ陣営の戦略も、長くは持たない。選対本部では、今後打ち出す予定だった多くのネガティブ広告を使うのか、それともポジティブな「最高司令官」というイメージを強調するのかが議論の的になっている。ネガティブ広告のテーマは単純明快。バイデンは大統領に適任ではない、今のような危機のただ中ではなおさらだ──。
昨年流れた選挙CMを焼き直すことにもなりそうだ。医療保険に不法移民の加入を認めるかどうか民主党の大統領候補たちに挙手で答えさせた場面を使ったものだが、新CMではおずおずと手を挙げて賛成の意を示すバイデンに焦点を当てるだろう。
トランプがいずれネガティブ広告を認めるのは間違いない。なにしろ民主党系の特別政治活動委員会(スーパーPAC)が、新型コロナウイルス問題への対応について一斉攻撃を仕掛けている。例えばスーパーPACのプライオリティーズUSAアクションは、主要な激戦州で600万ドルを投じ、トランプが当初ウイルス問題を軽視したことを批判した。
そこでトランプ陣営は3月26日、プライオリティーズのCMを流すテレビ局を訴えるという脅しを掛けた。大統領は新型コロナウイルスのことを「でっち上げ」などと言っていないというのが、その理由だ。
秋には空気が変わっているか
トランプ陣営は、バイデンが自分なら新型コロナウイルス危機にどう対処するか語った内容について、その多くは既にトランプがやっていると主張する。「バイデン案は二番煎じで、遅過ぎる」と、陣営の広報担当アンドルー・クラークは言う。じきにCMでもそう主張するだろう。