最新記事

2020米大統領選

新型コロナが握る米大統領選の行方──トランプの再選戦略は

The Coronavirus Campaign

2020年4月15日(水)15時40分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

ILLUSTRATION BY MARINA LINCHEVSKA/SHUTTERSTOCK

<コロナ危機への対応でトランプの支持率は自己最高に、この勢いが秋まで持つかは今後の感染の展開次第>

秋の米大統領選で再選を目指すドナルド・トランプのある選挙CMは、思い出せないほど遠い昔に戻ったような内容だ。

CMのタイトルは「ファイター」。黒人の女性有権者(「アメリカを再び偉大に」と書かれた赤い野球帽をかぶっている)が、トランプ政権下での経済の好調ぶりを絶賛する。

「この国の経済を見て。彼が成し遂げたことを見て。大統領を支持しないなんて選択肢はないでしょう?」

このCMには、トランプ陣営が選挙戦でやろうとしていることが凝縮されていた。低い失業率、賃金の上昇、好調な株式市場をアピールするというものだ。

同時に、非白人の支持率を高めようという狙いも見えた。前回2016年の大統領選でトランプが得た黒人票は全体の8%。これが10%台前半に増えるだけでも民主党候補に圧勝できると陣営は考えていた。

選挙戦で最も強調すべきポイントは「平和と繁栄をつかさどる大統領」だった。「ドナルド・トランプの名と彼が残した輝かしい業績ほど、全てのアメリカ人にとって『勝利』を象徴するものはない」と、選挙対策本部責任者のブラッド・パースケールは語っていた。

ところが、状況は一変。今年の大統領選は「新型コロナウイルス選挙」になった。目下の危機にトランプがどう対処するかが、結果を大きく左右する。

いずれネガティブ広告に走る

パースケールは、テレビとネットの広告費として10億ドルを確保したと言う。前回選挙とは比べものにならないほど潤沢な額だ。

今後打ち出される新しいCMは、即座に作り変えられた。既に編集が終わった「最高司令官」と題するCMは、危機に際しても冷静で力強い指導力を発揮する「戦時大統領」としてトランプを描く。危機管理室に大統領とウイルス対策チームが集まった光景を捉えたモノクロの映像に、「決断力を備えたリーダー」というナレーションが流れる。

もう1本のCMは、トランプが1月31日に中国からのアメリカ入国禁止措置を打ち出したとき、今は民主党の大統領候補に事実上決まったジョー・バイデン前副大統領が「外国人排斥」と非難したことに焦点を当てている。「専門家によれば、あの決断は数千数万のアメリカ人の命を救った」とナレーションが入る。

どちらのCMもまだ公開されていないが、トランプが新型コロナウイルス関連の会見を毎日行うようになってから、彼の支持率は急上昇している。3月24日に発表されたギャラップ社の世論調査では、トランプの仕事ぶりを支持すると答えた人が49%に上り、彼にとって過去最高の数字となった。さらに60%がトランプの危機対応を支持すると答えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中