夏には感染は終息する、と考えていいのか?
4月7日東京 REUTERS/Issei Kato
<風邪を引き起こす4種類のヒトコロナウイルスは、夏季は感染が少ない。新型コロナウイルスでも同様の流行パターンがあるのだろうか......>
季節性インフルエンザは、一般に、冬に流行し、春になって気温が上昇すると終息する。2019年末以降、中国から流行が広がった新型コロナウイルスについても、当初は「暖かくなれば終息するのではないか」との楽観的な見方があったが、感染者数は2020年4月6日時点で121万人を超えた。北半球の多くの地域で春が到来し、専門家は、新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと同様の流行パターンをたどるのか、注視している。
夏になっても、感染は広がり続けるとみられる
英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、2006年から2011年までの英国でのデータをもとに風邪を引き起こす4種類のヒトコロナウイルス(HCoV)の流行パターンを分析し、2020年3月30日、未査読の研究論文をオープンアクセスジャーナル「ウェルカム・オープン・リサーチ」で公開した。
これによると、ヒトコロナウイルスは冬に流行して2月にピークを迎え、夏季は感染が少ないことがわかった。研究論文の筆頭著者であるユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのロブ・オールドリッジ博士は「これらのヒトコロナウイルスについては、夏は感染者が少なく、冬になると感染が広がると考えられる」とする一方、「新型コロナウイルスでも同様の流行パターンがあるのかどうかは不明だ」と述べている。
新型コロナウイルスはまったく新しい感染因子であり、現時点では、免疫を獲得している集団がない。従って、夏になっても、感染は広がり続けるとみられている。
英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のウイルス学者マイケル・スキナー博士は、英紙ガーディアンで「新型コロナウイルスの活動が季節によって変動し、これが流行に一定の役割を果たしていると考えられる」としながらも、「その影響度は、社会的距離戦略(ソーシャル・ディスタンシング)で得られる効果に比べれば、極めて限定的だ」とコメントしている。
英レディング大学のベンジャミン・ニューマン博士も同様の見解を示す。「新型コロナウイルスは氷点下に近い冬の中国で流行がはじまり、現在では、北極圏に位置するアイスランドから赤道直下のブラジル、エクアドルまで、広範囲で感染が広がっている。また、冬から春になり、ウイルスの感染拡大は世界で加速している」と強調する。