メルケル首相のスピーチは世界から賞賛されたが、州財務相が自殺するなど混乱も続く
真摯なスピーチは賞賛されたが...... Michael Kappeler/Pool via Reuters
<メルケル首相の真摯なスピーチは全世界で賞賛され、一時的に新感染者数が激減したが再び増加し、ヘッセン州財務相が自殺するなど、ドイツでも混乱が続いている......>
3月中旬から下旬にかけては、メルケル首相のスピーチが世界中で評価され、その翌日には首相の感染が疑われ自己隔離(すぐに陰性判断、30日の3度目のテストも陰性だった)、そしてロックダウンと、非常にめまぐるしい10 日間だった。ドイツおよびヨーロッパの対コロナ対策の細かな状況をまとめた。
「ジャーマニー・ファースト」ではない
ドイツでは24日より徐々に他国の患者の受け入れが始まっている。軍用機などを用いて、最も深刻な被害を受けている北イタリアのロンバルディア地方からのほか、フランスやスイスなどからも受け入れている。ドイツ国内の病院の現状を照らし合わせた上での受け入れとなる。
EUでは早くから加盟国内での物資の共有が提案されている。人工呼吸器生産の世界的大手であるリューベックのドレーガーヴェルク社はドイツ政府から1万台の生産を請け負っているが、さらにオーストリアのクルツ首相や、オランダ国王からも電話を受けた。記録的な受注量のため希望の台数を提供することはできないかもしれないが、社として「ジャーマニー・ファースト」の考え方は存在しないという。
消毒液が不足するなか、ドイツの国民的リキュールであるイェーガーマイスターはアルコール5万リットルを消毒液として提供。他方、同じく入手困難になっているマスクなどは盗難も多く、24日にはドイツに送られるはずのマスク600万枚がケニアの空港で紛失される事件もあった。
フィリピン人看護師を迎え入れようとして問題に
医療施設での人手不足も深刻だ。現場のサポートのため、150の医療施設からなるヘッセン病院協会が看護師75名を迎え入れる許可をフィリピン政府から得たことが20日に発表されると、「フィリピン人看護師は祖国でこそ必要とされている」と、ロックダウン中のフィリピンで多くの批判の声があがった。独外務省は就労ビザの発行などを急いでいるようだが、マニラで出国禁止令も敷かれた今、計画にどのような影響が出るかは不明だ。
他州より一足早く21日0時から外出禁止令が出されたバイエルン州は30日、外出禁止を4月19日まで延期すると発表。3月末は晴天が続き、待望の春を謳歌したい人々が公園などに一斉に繰り出してしまったことも原因の1つのようだ。
バイエルン州の独断は一部で批判も浴びた。20日のメルケル首相の真摯なスピーチは全世界で賞賛されたが、それは、旧東ドイツ出身であり、移動の自由や民主主義を尊重する彼女の、外出禁止令への躊躇が伝わってきたからだ。外出禁止令が出されて以来、バイエルン州では一時的に新感染者数が激減したが、その後はまた増えている。また、外出禁止が長引くと、体だけでなく心の健康のほうも心配になってくる。