最新記事

新型コロナウイルス

韓国製PCR検査キットが新型コロナから世界を救う日

2020年4月14日(火)19時20分
カイル・フェリアー(韓国経済研究所学術研究部長)

ドイツで行われたドライブスルー形式のPCR検査のデモンストレーション Kai Pfaffenbach-REUTERS

<当初は新型コロナ流行の中心地だった韓国が徹底的な検査で封じ込めに成功、今では120カ国以上が韓国の検査キットを求めている>

韓国は少し前まで新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的な流行)の中心地の1つだったが、現在ではウイルスをうまく封じ込めている。成功の主因は徹底的な検査にあると言えそうだ。

世界中で感染拡大が深刻化している今、韓国にとって自国製のPCR検査キットの輸出は経済的利益につながるだけでなく、長期的な経済的安全保障の確保にも役立つ。

韓国は4月11日までに51万人以上の検査を実施した。最も危機的な状況だった2月下旬~3月上旬には1日に約2万人を検査していたが、最近は1万人以下に減っている。それでも検査キットを製造する韓国企業は現在、少なくとも1日13万5000人分を生産しているので、余剰生産能力を輸出に回すことができる。

3月に韓国企業27社は合計4860万ドル相当の検査キットを輸出した。4月はさらに増えそうだ。これまでに120カ国以上が韓国に検査キットの購入または人道支援による供与を依頼している。

トランプ米大統領も3月24日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との電話会談で医療品の援助を要請。韓国企業は現在、コロナウイルスの新たな感染者数が世界で最も多いアメリカからの需要増加の恩恵を受けている。

ロサンゼルス市当局などはシージェン社から2万個の検査キットを125万ドルで購入した。今後は週に10万件の検査を行う予定だ。EDGC社は、複数の州に最大100万人分の検査キットを近日中に納入する予定だ。

アメリカ以外でも、イギリス、フランス、中国、カナダなど15カ国が検査キットなどの医療用品の支援を要請した。イタリアやハンガリーなどのEU諸国とブラジル、日本、アラブ首長国連邦(UAE)には、既に検査キットを納入済みか、または納入契約を結んでいる。

世界的な関心の高まりを受けて、韓国政府は検査キット製造メーカーとの官民連携を強化している。3月26日には、国際貿易と医療・公衆衛生関係の公的機関が国内の生産状況のモニタリングと輸出支援を目的とする特別対策チームを設立。韓国貿易協会は、検査キットなどの医療用品の輸出企業に対する支援に特に力を入れようとしている。

韓国にとって、この医療品輸出は数字以上の大きな恩恵をもたらす可能性がある。検査キットの輸出は、危機に直面している国内経済の成長と雇用創出の絶好の機会だが、それ以上に世界各国の感染拡大防止に貢献できる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、バルト海の通信ケーブル破壊の疑いで捜

ワールド

トランプ減税抜きの予算決議案、米上院が未明に可決

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ビジネス

英企業、人件費増にらみ雇用削減加速 輸出受注1年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 6
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中