サニブラウンが明かした「五輪延期」への決意
LET THE ATHLETES SPEAK
サニブラウンも今は気丈に振る舞っている。だが、昨年のドーハ世界陸上では決勝を逃した悔しさから、もともと今季、そして東京五輪に懸ける意気込みは大きかった。
取材で2月にフロリダを訪れた際、神妙な表情でこう話していた。「練習での弱い部分が(ドーハ世界陸上での)試合で出た。練習からちゃんと取り組まないと」。
フロリダの抜けるような青空の下、時折、汗を拭いながら、一本一本、真剣な表情でスタート練習に取り組む視線の先には間違いなく東京が映っていた。
現在も大学のトラックは閉鎖されたままで、今は大学構内の芝生で体を動かす程度にとどまっている。いつスパイクを履いて練習できるのか、大学のトラックが使用できるのか、まだめどは立っていない。
だが1年という猶予が生まれた今、サニブラウンに焦りはない。「一日一日、考えながらやっていきたい。(延期になっても)目標は変わらない。頂点を目指す」
今、世界は非常事態にある。平常の生活が送れない状況でスポーツの優先順位が下がるのは当然だ。延期に反対した選手たちもそれは理解しているだろう。安定した社会、そして支援や応援があって初めてスポーツが社会に存在する。「裸の王様」のバッハだけは、それを理解していないようだが。
<本誌2020年4月14日号「ルポ 五輪延期」特集より>
2020年4月14日号(4月7日発売)は「ルポ五輪延期」特集。IOC、日本政府、東京都の「権謀術数と打算」を追う。PLUS 陸上サニブラウンの本音/デーブ・スペクター五輪斬り/「五輪特需景気」消滅?