新型コロナウイルス院内感染で医療関係者24人が死亡 インドネシア、防護服など不足で危機的状況
感染症状を隠して来院する患者も
さらにもうひとつの原因として考えられるのは未発症の患者が自らの感染を気づかぬままに医療機関を訪れ、別の病気や症状を訴えて看護師や医師と面談し、治療や検査の結果初めて感染が判明するというケースがあるとしている。
さらになかには新型コロナウイルス感染の可能性がある症状が出ている、または海外の感染国への渡航歴があるにも関わらず、それを隠して医療機関を訪れる患者の存在も指摘する。
「新型コロナウイルスの感染が疑われる症状を正直に訴えると医療機関から受け入れを拒否されるのではないかと心配するあまりそれを言わずに診察を受け、その結果医師や看護師が感染してしまう」というのだ。
これらの新型コロナウイルスではないという一般患者を診察する場合には、看護師も医師もPPEを着用しないことから、医療関係者の感染の原因となっているというのだ。
こうした自覚症状があるにも関わらず患者が隠して来院する例は、ジャカルタ南部などで実例が報告されている。
医療関係者は「自分の症状を正直に医療関係者に伝えて医療機関を訪れるようにしてほしい。そうしないと患者と医療関係者の間の信頼が崩れ、その結果として医療関係者が犠牲となってしまう」と訴える事態となっている。
政府、感染者、医療関係者各々に訴え
IDIをはじめとしてインドネシアの現場で奮闘する医療関係者が声を揃えて訴えているのは、医療用の高品質なPPEやマスク、防護対策の十分で一刻も早い配分である。
さらに新型コロナウイルス感染患者だけを受け入れる病院・医療施設の拡充、医療関係者への手厚い配慮などである。インドネシアも全国に新型コロナウイルス感染患者専用の医療施設が指定されているが、すでにベッドが不足する事態となっているのが現状という。
加えて感染者側の問題として無自覚症状の感染者さらに自覚があるのにそれを隠す感染者の問題は「非常に危険である」として重ねて注意を喚起している。
そして最後に医師、看護師などの医療関係者に対してもファキ理事は「自分だけは健康で感染しないなどと思わないことだ。そう思うと感染への警戒が甘くなってしまう」と指摘し、最前線で活動する際の心得を再確認するよう求めている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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