新型コロナウイルス院内感染で医療関係者24人が死亡 インドネシア、防護服など不足で危機的状況
インドネシアの首都ジャカルタでは感染拡大防止のため、スポーツ施設にホームレスの人びとを収容しはじめた。AJENG DINAR ULFIANA - REUTER
<世界各国で深刻な問題となってる医療のひっ迫は、人口2億6000万人の東南アジアの大国で「医療関係者の死」となって現れた>
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないインドネシアでは、治療の最前線で活動中の医師ら医療関係者24人がこれまでに感染で死亡していることが明らかになった。
ASEAN10カ国では外国人労働者の宿舎などでの集団感染が判明したシンガポールが4月27日時点で新型コロナウイルス感染最多(14423人、死者12人)となっている。一方、インドネシアは死者が765人、そして死亡率8.4%と域内最悪の状況となっている。
またASEAN加盟国全てが医療関係者の死者数を明らかにしている訳ではないものの、インドネシアは24人が犠牲となっており、おそらく域内で最も院内感染が多いとみられている。
インドネシア医師協会(IDI)は新型コロナウイルス治療にあたる医療関係者の危機的状況を国民に告知するため、順次死亡した医師、看護師などを実名と肩書を付した白黒の顔写真とともにSNSを通じて掲載している。
また4月初旬に日刊紙「テンポ」は紙面一面を使って死亡した医療関係者の顔写真を掲載して医療現場の厳しい状況を訴えた。
こうした医療関係者の死を公表するに至った背景には、国民に医師らも懸命に戦い、命を捧げているという現場の実情を強く訴えると同時に、医療関係者の置かれている窮状を理解してもらう意味も込められているという。
「テンポ」は4月17日の紙面でIDIのダエン・モハマド・ファキ理事とのインタビュー記事を掲載し、その中でインドネシアの医療現場が現在直面する問題を明らかにし、早急な対策を呼びかけた。
防護服の絶対的不足 雨合羽やゴミ袋も利用
インタビューの中で「なぜ多くの医療関係者が犠牲になっているのか」との問いに対してファキ理事は「まず、医療従事者を感染から守る防護服(PPE)が絶対的に不足している」という事実を指摘している。
感染症の治療に専門的に取り組む指定病院ですらPPEが不足しているのに加えて「それ以外の病院や小規模クリニック、個人経営のクリニック、さらに地方の医療機関などでのPPE不足は致命的な状況に直面している」ということで、PPEがない場合は医療現場で医師らはプラスチック製やビニール製の雨合羽、それすら都合がつかない場合は大きなゴミ用の袋まで代用しているケースもあるという厳しい状況を明らかにしている。