最新記事

中国

習近平の武漢入りとWHOのパンデミック宣言

2020年3月12日(木)13時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

人民大会堂で習近平に跪(ひざまず)くように挨拶するテドロスWHO事務局長 Naohiko Hatta/Pool via REUTERS

習近平が10日初武漢入りし中国が新型コロナから脱出したシグナルを発信すると、11日にはWTOがパンデミック宣言をした。世界に新型コロナを蔓延させた真犯人が習近平なら、WHO事務局長は共犯者だ。

習近平の武漢入りは「人民戦疫」の勝利宣言

3月10日午前、習近平国家主席は湖北省武漢市に足を踏み入れた。新型コロナウイルス肺炎(以下、新型コロナ)発症以来、初めてのことである。李克強国務院総理は1月27日に武漢入りしている。その前には孫春蘭国務院副総理が武漢視察に行ったことからも分かるように、一般に被災地に最初に行くのは中国政府(国務院)側のトップである。

2002年に発生し2003年2月に公けになったSARS(サーズ)の時は江沢民がなんとか胡錦涛政権にバトンタッチする時(2003年3月5日の全人代)まで公表を延ばし、胡錦涛のせいにしようとしたために、胡錦涛政権が誕生した後、江沢民との違いを人民に見せるために胡錦涛が国家主席として現地視察に行ったことがあるが、これは例外だ。

したがって順番としては中国政治のいつもの動きと同じなのだが、いま武漢入りしたのは何を意味しているかを、先ず分析しよう。

第一に考えなければならないのは、新規感染者数の増加が激減したため、戦いは終わりを告げ始めているというシグナルを発信することである。

習近平は新型コロナとの戦いを「人民戦疫」と名付けて全国人民の参加を求めた。「戦役」という言葉を、発音が同じ「戦疫」に置き換えて、新中国(中華人民共和国)が誕生した時と同じくらいの生死をかけた戦いなのだと叫び続けた。

その戦いに「勝利したのだ」という、言うならば「勝利宣言」なのである。

なぜなら客観的データが、それを物語っているからである。

新規感染者数の推移

そもそも武漢が安全になったと判断していなければ、習近平は絶対に武漢に行ってはいない。彼は、そんな危険は絶対に冒さない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中