最新記事

アメリカ社会

コロナ感染爆発のニューヨーク、「医療崩壊は不可避」と州知事

Almost Any Coronavirus Scenario Will Overwhelm New York Hospitals, Gov Says

2020年3月27日(金)16時15分
ジェニ・フィンク

新型コロナ感染拡大の最前線となったニューヨーク州は、1日の死者が100人にのぼる危機モードに(写真は3月25日、マンハッタン) Carlo Allegri-REUTERS

<全米でもいち早く新型コロナ危機に目覚めたニューヨーク州のクオモ州知事が、毎日の記者会見で迫り来る運命を州民に語り、協力を求めながら対策を進めててきた医療崩壊との戦い>

米ニューヨーク州では新型コロナウイルスの感染者が急増しており、同州のアンドリュー・クオモ知事は3月26日の会見で、さらなる病床の確保が急務だと指摘。「今後どのようなシナリオでも、現在の医療システムの受け入れ能力では足りないのは明らかだ」と語った。

クオモは会見の中で、可能な限り感染者の増加を抑えるという目標は変わらないが、現時点では、病院が適切に対応できるレベルに抑えるのは無理だと説明。そのため、既存の施設を一時的に病院として使用することで病床を増やせないか、検討しているところだと語った。

現在、米陸軍工兵隊がニューヨーク市の見本市会場ジャビッツ・センター、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校、多目的アリーナのウェストチェスター・カウンティセンターとニューヨーク州立大学オールド・ウェストバリー校のキャンパスに仮設病院を設立中。この4カ所に加えて、当局がさらに仮設施設の建設地を探しているところだという。最終的にはマンハッタンの5つの区すべてと、隣接するナッソー、サフォーク、ウェストチェスターおよびロックランドの各郡にそれぞれ1000床以上を確保することが目標だ。

病床を5万から14万に

ニューヨーク州は新型コロナウイルスの感染拡大が米国内で最も深刻で、ジョンズ・ホプキンズ大学によれば国内の感染者6万9246人のうち3万3000人以上を占めている。ほかの州に比べて死者の数も最も多く、これまでに少なくとも353人が死亡した。

クオモはまた、同ウイルスに感染しても大部分の患者は大がかりな治療を受けずに回復できるが、約15%の患者は入院の必要が生じると説明。65歳以上の高齢者や持病のある人など抵抗力の弱い人々が、入院する可能性が高いとした。

感染の拡大を抑えるために、クオモは住民同士の接触を制限する複数の措置を導入。レストランやバーの営業はテイクアウトか宅配サービスのみに限定し、規模にかかわらず全ての集会を禁止し(食料品店や薬局などの)。生活必需品を除く全ての店舗の閉鎖を命じた。

並行して、病院の受け入れ能力を拡大するための手も打っている、とクオモは説明。寮やホテルなどの既存の施設を病院として使うだけでなく、各病院に対しては、受け入れ能力を現在の1.5倍から2倍に増やすよう求めた。最終的には病床数を現在の5万3000床から14万に増やしたい考えだ。

<参考記事>「アメリカの医療システムは新型コロナの津波に呑み込まれる」
<参考記事>3Dプリンターとシュノーケリングマスクで人工呼吸器の試作に成功、伊ベンチャー

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ当局、イスタンブール市長拘束抗議デモ報道で記

ビジネス

シンガポールのコアインフレ率、2月は4年ぶり低水準

ビジネス

アングル:新年度も超長期債に需給不安か、日銀利上げ

ビジネス

保有国債、金融調節上の必要生じた場合の売却可能性ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    トランプ版「赤狩り」が始まった――リベラル思想の温…
  • 10
    インド株から中国株へ、「外国人投資家」の急速なシ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中