中国の無症状感染者に対する扱い
こうした中で、特徴的なのは濃厚接触者の数が、これも時々刻々更新されて報道されたことである。
この「濃厚接触者を(かなり)正確に掌握している」というのが中国の特徴だ。
たとえば、確定患者およびその患者と接触したAさんが、その後どこでどういう行動をしたかに関する追跡は、中国にとっては「お手の物」なのである。
なんと言っても3億台近い監視カメラが全国くまなく張り巡らされ、14億の全ての人民に身分証番号があり、顔認識カメラにより、顔をレンズが捕えさえすれば身分証番号が出て来る。
番号を入力(あるいはパソコン画面に現れた番号をクリック)しさえすれば、何年何月何日どこで生まれたかに始まり、両親の名前や職業、財産(持ち家の有り無し、貯金残高、借金、車の有無と種類・プレートナンバー...)、犯罪歴...等や、本人の学歴、職歴、趣味、電話番号、交流関係、購買動向など、全ての個人情報が一瞬でパソコン画面上に提示される。
患者を特定すれば、その身分証番号との濃厚接触者を見つけることができ、今度はその複数の濃厚接触者を監視カメラが徹底して追跡してくれる。こうして割り出した濃厚接触者を、まるで犯人捜査のように追跡して「捕まえ」、検査を強行するのである。その中に「無症状だけど、陽性」という人たちが出て来るわけだ。逃げようがない。
まるでブラックユーモアのような逸話もある。
湖北省以外に住む男がいた。ある晩、公安から男に電話が掛かってきて「あなたの奥さんは武漢人ですね。最近武漢に戻ったことはありませんか?」と聞いてきた。男は「はい、妻は武漢人ですが、ここ数ヶ月は武漢に戻ったことはありません」と答えた。すると公安は「そうですか。ただあなたの奥さんは昨日ホテルを取りましたよね。武漢人がホテルを取ることに関して私たちは非常に神経質に監視しているので、念のため何の目的でホテルを取ったのか確認しただけです。武漢に戻ってないのなら大丈夫です」と公安は言い残し電話を切った。少しも大丈夫でないのは男の方で、これにより妻の不倫がばれたという話だが、要は、これくらい緻密に監視網が張られているという逸話である。
無症状感染者をどのように扱うのか
問題は、こうして検出した無症状感染者をどのように扱うのかである。
まず一人残らず「施設」に入れて14日間「隔離」し観察する。14日間経っても症状が出ず、かつPCR検査で陰性になれば、そこから24時間後に再度検査し、それでも陰性であるならば、晴れて「無罪放免」となり隔離を解除する。