中国の無症状感染者に対する扱い
2月14日には国務院の記者会見で、行政組織である国家衛生健康委員会が「無症状感染者に関しては対外的に公表しないと決定した」と正式に公言した。
「公表しないという決定」が妥当であるか否かは別として、「公表しないという決定をした」という事実を、正確に認識しなければならないだろう。
この決定に関しては中国国内でも少なからぬ疑問と批判がネット上で見られた。
これはたとえば日本の専門家会議で決定を出しても「それはおかしいだろう」という声がメディアで上がるのと類似の性格の「声」である。
無症状感染者の割合
国によって無症状感染者の統計的扱いは異なるようだが、ネイチャーの論文によると、無症状(asymptomatic)感染者は全感染者数の30-60%を占めるようだ。したがって中国のこれまでの累積患者数が8万強であるなら、無症状感染者数が4万人強いたというのは、論理的範囲内であるように思われる。
ただ、中国以外のどの国も、中国ほどに「一に検査、二に検査!」と、「ともかく検査が何よりも優先される」という対策を実施しているわけではないので、無症状感染者の数は、他の国でも同じ程度に(場合によっては、もっと)多いのではないだろうか。
日本でも、もし「検査を優先する」という対策を実施していたとすれば、日本の無症状感染者の数はかなり多いかもしれない。街で元気に動き回っている若者の中には、全く無症状でもPCR検査をすれば実は陽性だったという者が相当数いるかもしれないのである。それは私たちのすぐ隣にいるかもしれず、無症状感染者をチェックできるか否かは、今後の感染拡大を予測する重要なファクターの一つになり、対策の取りようも違って来るはずだ。ただ日本では「医療機関や医療関係者の数に限りがあるので、PCR検査を積極的には行わない」と専門家会議で決めているので、日本人はおとなしく専門家の決定に従っているだけのことである。
中国はどのようにして無症状感染者を把握したのか
では、中国はいったいどのようにして無症状感染者を把握できたのかを考察してみよう。
それは「濃厚接触者」をほぼ確実に掌握していることに起因する。
中国では3月10日ごろまで、日夜24時間を通して、1時間おきくらいに上記の「1~3」の分類に従って報道していた。各直轄市・省・自治区別に報告が上がってくるので、実際上は2,3分に一回くらいの割合で報道され、そのデータを追いかけていると、一日中何もできないというほど頻繁にデータが更新されインパクトと恐怖を与えた。
もちろん退院者数や死者の数も時々刻々報道していたので、その緊迫度は巨大地震や津波が起きた時のような強烈な印象を与えた。