最新記事

中国

中国の無症状感染者に対する扱い

2020年3月26日(木)14時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型コロナウイルス 米CDCが顕微鏡写真公開 Cynthia Goldsmith/Maureen Metcalfe/Azaibi Tamin/Centers for Disease Control and Prevention/Handout via Reuters

中国では新型コロナウイルスによる無症状感染者を患者として扱っていないためデータ公表しておらず、本当は累積12万人以上の感染者がいたのではないかと推測されている。中国はどのようにして無症状感染者を見つけ対処したのかを考察する。

無症状感染者に対する中国の対策

3月24日、日本のメディアは一斉に「中国湖北省では無症状の新型コロナウイルス感染者がいまだ相次いでいる」と報じた。3月23日付けの中国メディア「財新」が報道したからだ。また香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト (South China Morning Post、南華早報=南早)が「中国政府の機密情報により、先月末時点で無症状の感染者4.3万人以上が統計から外されていた」と報じていると、RFIも同時に報道している。

この中に「機密情報」という言葉があるために「中国は今もなお感染者数を隠蔽しているのではないか」という疑念が世界を駆け巡った。

しかし、この対策が良い方法であるか否かは別として、中国は早くから「無症状感染者は患者の数の中に計上しない」と宣言している。そのことは前掲の3月23日付けの「財新」にも明記してある。

ただ、ウイルスの正体と症状と推移が、中国の衛生保健当局にも十分にはつかめなかったので(今も未知の部分が多いため)、無症状感染者の取り扱いに関する対策は試行錯誤的で、たしかに二転三転している。

たとえば2月5日には中国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)(アメリカ疾病管理予防センター)に相当する中国疾病制御センターは「しばらくの間、無症状感染者を患者数(治療すべき確定患者数)に含めて同時に報告すること」という指示を出したが、2日後(2月7日)には、「両者を分けて、無症状感染者は単独で別途の人数として報告するようにせよ」と変更した。

つまり、「無症状感染者と確定患者を分けて管理する」という「第四版防控方案」(疾病防御方案、第4ヴァージョン)に基づいて報告するというやり方を採用することになったのである。それまで診断基準には

  ●症状

  ●CTスキャン

  ●PCR検査

の3種類があり、この3つの条件がそろわないと「確定患者」には分類されていなかったが、第4ヴァージョン報告書では、湖北省におけるPCR検査キットの数が不十分だったため、湖北省に限り「症状とCTスキャン」で診断されれば「患者」とみなして「確定患者」を計算することになった。その結果、以下のように分類して、重症軽症の区別を考慮して入院や隔離などの対応を決めることになったのである。

  1.確定患者(症状+CT+PCR陽性)

  2.臨床診断患者(症状+CT)(湖北省限定)

   この内PCR陽性となった者は「1」に分類して統計

  3.疑似感染者(症状+CT)(湖北以外)

   この内PCR陽性になった者は「1」に分類して統計

  4.無症状感染者(PCR陽性)

この基準の採用を開始したのが2月12日だったため、湖北省ではその日だけ突然患者数が激増(1日で1.4万人増)しているというデータが出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザの医薬品が極端に不足、支援物資搬入阻止で=WH

ビジネス

中国、株式に売り越し上限設定 ヘッジファンドなど対

ビジネス

ステランティス世界出荷、第1四半期は前年比9%減の

ワールド

香港最大の民主派政党、中国が解散迫る=関係者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた考古学者が「証拠」とみなす「見事な遺物」とは?
  • 4
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 5
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 8
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 9
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 10
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中