新型コロナウイルスの「0号患者」を探せ!
Scientists are still searching for the source of COVID-19: why it matters
こうした誤った情報を煽ったのは報道だった。メディアは当初、新型コロナウイルスと市場や動物の間につながりがあると示唆する報道を行っていたが、それを裏付ける情報は出ていない。
それでも科学者たちは、その線を調べ続けている。とりわけコウモリは複数のコロナウイルスの自然宿主(ウイルスが最初に寄生した動物)と考えられているため、注目されている。
過去の調査では、SARSコロナウイルスやMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスをはじめ、感染症を引き起こしやすい複数のコロナウイルスが、コウモリの保有するウイルスと遺伝的に似ていたことが分かっている。このように、コウモリが貯め込んだ多様なウイルスが、時として(多くの場合は別の動物を介して)人に飛び移る可能性があるのだ。
たとえばSARSコロナウイルスを保有している宿主を調べた複数の調査では、中国に生息するキクガシラコウモリがそれに最も近いウイルスを保有していたという結果が示された。それがジャコウネコを介してヒトに感染したとされている。そして1月には新たに、雲南省でキクガシラコウモリから採取されたウイルスと新型コロナウイルスの遺伝子配列が96%の高確率で一致したというデータが公表された。これとは別の報告書も、新型コロナウイルスとSARS関連のコウモリコロナウイルスには89%の類似性があると指摘した。
突然変異で問題はさらに複雑に
だがこうした「類似性」だけでは、現在の感染拡大を引き起こしているウイルスの発生源を特定するには不十分だ。
重要な問題は、新型コロナウイルスとコウモリコロナウイルスが「かなり似ている」ように見えるのが事実でも、突然変異率を考慮に入れると話は複雑になる。ウイルスを媒介する中間宿主がその突然変異に関与している可能性も高い。実際、コウモリに寄生する多くのウイルスは、まず別の動物に寄生して威力を増した後にヒトに飛び移り、感染を拡大させることが分かっている。
たとえば02年と03年に流行したSARSコロナウイルスの場合は、ジャコウネコがウイルスを媒介したと特定された。今回のウイルスでは、センザンコウが中間宿主ではないかと指摘する声があがっている。
ウイルスが動物からヒトにジャンプするのを阻止できれば、何十億ドルもの医療費が節減でき、多くの人の命を救える可能性がある。
今後も野生生物の間では、さまざまなウイルスが飛び交い続けるだろう。将来の感染拡大を防ぎ、健全な世界経済を維持していくためには、ウイルスの多様性やそれを保有する種、それらの種がどこに生息しているのかを知り、人間のどのような行動が感染リスクを増大させる可能性があるのかを知っておくことが不可欠だ。