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米大統領選

米民主党の「本命」バイデンが苦戦する理由

Biden’s World Experience Proves a Lead Balloon

2020年3月2日(月)16時20分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

「アメリカの大統領が最も大きな権限を持つのは外交政策だが、それが有権者の心をつかむことは残念ながらまずない」と、バイデンの上級外交政策顧問を務めたマイケル・ホルツェルは言う。

「今後数週間に深刻な国際的危機が起きない限り、そしてそんな危機は起きてほしくないが、バイデンの外交実績は予備選では大した強みにならないだろう。米政治の悲しい現実だ」

バイデンは遊説中にほかの困難にも直面してきた。その多くは自分が招いたものだ。77歳のバイデンは演説や有権者との受け答えの出来にムラがあり、失言も目に付く。

さらにバイデンと息子ハンターのウクライナでの活動にまつわる疑惑で、バイデンのイメージを傷つけようとしたトランプの試み(そのためにトランプは弾劾されることになったが)はある程度効果を上げたとみていい。

バイデン陣営のスタッフでさえ、ハンターがウクライナ企業から多額の報酬を得ていたことは、父親にとって深刻な「利益相反」事案となったと認める。

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)ら各国指導者の知己を得たが ALEXANDER NATRUSKIN-REUTERS

副大統領時代が絶頂か

バイデンの政治家としてのキャリアの長さは両刃の剣ともなる。過去に議会で投じた票が批判の的になりやすいからだ。特に2002年にイラクに対する軍事力行使の決議案に賛成票を投じたことは大きな失点となった。

遊説やテレビ討論会で、バイデンは必死になって自分の立場を擁護してきた。イラク侵攻については当時のブッシュ政権にだまされていた、武力行使には国連安全保障理事会の決議が必要だとする法案を成立させようとしたができなかった、といったものだ。

しかしブティジェッジのような新顔が支持を伸ばしている状況では、こうした弁解はむなしく響く。インディアナ州の小さな都市サウスベンドの市長以外に政治経験がないブティジェッジは、2月7日のテレビ討論会で「ついに歴史のページをめくる」時が来たと宣言した。

さらにブティジェッジは明らかにバイデンを標的にしてこう言い放った。

「有権者の皆さんがワシントンの既成政治にまみれた最長の経験を誇る人物をお望みなら、その候補者はここにいる。もちろんそれは私ではない」

民主党支持の有権者にはこのメッセージが届いたようだ。その証拠にニューハンプシャー州予備選でブティジェッジは首位サンダースに僅差の2位で、得票率はバイデンの3倍近い24.4%だった(編集部注:3月1日、予備選の山場となる3日のスーパーチューズデーを目前にブティジェッジは選挙戦からの撤退を表明した)。

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