新型コロナウイルス、迅速で先手に回る「経済対策」を
新型コロナウイルスの感染拡大でプロ野球のオープン戦も無観客試合に(2月29日) Athit Perawongmetha-REUTERS
<政府はイベント自粛、小中高一斉休校などインパクトの大きい感染対策を打ち出した。経済面のマイナスもかなりのものだが、それを打ち消す大胆な経済対策をためらってはならない>
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年2月28日付)からの転載です。
1──経済活動を抑えてでも、感染拡大を食い止める方針に舵をきる
2月26日、政府は大規模なスポーツ・文化イベントの開催を2週間自粛するように要請した。翌27日には、全国の小中学校、高等学校や特別支援学校に対して当面の臨時休業を要請した。これらの方策は社会的にも大きなインパクトを与えている。経済に一定のダメージがあったとしても、感染拡大防止を最優先にするとの判断であろう。
対策にあたる政府の専門家会議は、「これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」であり、「仮に感染の拡大が急速に進むと(中略)、社会・経済活動の混乱なども深刻化する恐れ」があるとの見解を示している。感染拡大防止のためには、経済活動が一定制限されることは止むを得ない。今回の措置によって感染が早期に収束すれば、短期的に先送りされた需要も出てくる。
短期的な悪影響よりも、不十分な対策で感染拡大防止に失敗し、長期間に渡ってより大きな影響を被ることの方が心配だ。足もとで、日本国内の新型肺炎新規感染者数は増加しており、検査体制が整えば今後さらに増加することも予想される[図表1]。感染者数の増加の抑え込みに目途が立たないようでは、更に社会不安が増して、経済活動が滞る。日本の景気にとっても、まさに瀬戸際と言えよう。
2──不十分な対策で深刻な影響が出てしまってからでは遅い
今回の政府対応は、自粛要請という形で安倍首相が主導したものであり、政府がこれまで以上に本腰を入れたことを示している。ただ、感染拡大防止には一定の効果が見込める半面、経済活動には相応のダメージが予想される。
特に、短期的な落ち込みに耐えられない企業が出てくることは心配だ。東京商工リサーチによると、中国人ツアー客の受け入れに注力してきた愛知県の温泉旅館が、21日までに破産申請手続きに入ったという。新型コロナウイルスの影響で経営破綻に至る初の事例と見られるが、インバウンド需要を取り込むことで息を吹き返した地方・中小企業は多いだけに、同様の事例が相次ぐことが懸念される。また、インバウンド需要を見込んで金融機関から融資を受け、設備投資をしたものの売上が急減し、資金繰りが悪化して債務返済に頭を抱える経営者もいるだろう。