新型コロナウイルス、迅速で先手に回る「経済対策」を
「自粛期間」が長引けば、今後、様々な問題が顕在化する可能性がある。政府の要請に従って中止や延期をした損失は補填されるのか、労働者が感染懸念から出社しなかった場合には所得が補償されるのか。そのような企業や個人を支えることはできるのか。早急に対応する必要がある。
新型コロナウイルスの感染地域は世界に拡大し、各国ともに対策を急いでいる。各国は同じ悩みを抱えているが、現在の日本の経済対策は、規模と内容の両面で見劣りしている[図表2]。社会的にインパクトの大きい感染拡大防止措置を取った英断を活かすためにも、予想される経済へのダメージを可能な限り抑える対策を早急に策定し、実施する必要がある。
足もと、追加の緊急対策を策定する動きが進んでいる。27日には、与党自民党および公明党が、新型コロナウイルス対策の追加提言をそれぞれとりまとめた。報道によれば1、追加提言の内容は、医療体制の整備や政府による情報発信体制の強化が柱となっているようだ。経済対策としては、既に影響が顕在化している中小企業の資金繰りを支援するため、融資上限の引き上げや対象業種の拡大などが盛り込まれると見られる。また、自民党は今後、経済団体や業界団体から意見聴取を行ったうえで、経済への悪影響を最低限に抑制するための提言も取りまとめる方針とされる2。新型コロナウイルス対策で先行する他国の取り組みを参考にしつつ、感染拡大の抑止と国民生活や企業活動を守るための対策を、迅速かつ先んじて準備してほしい。後に振り返って余分な対策だったと言われることもあり得るが、不十分な対策で深刻な影響が出てしまってからでは、経済の立ち直りは困難を極める。
1 日本経済新聞「自民「休業企業の支援」、公明「休校の影響配慮」 与党が新型コロナで追加提言」(2020年2月27日)
2 時事ドットコム「自民、デマ防止へ対外発信を 公明は首相会見提言―新型肺炎」(2020年2月27日)
[執筆者]
矢嶋 康次 (やじま やすひで)
ニッセイ基礎研究所
総合政策研究部 研究理事
チーフエコノミスト・経済研究部 兼任