最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス、迅速で先手に回る「経済対策」を

2020年3月2日(月)17時20分
矢嶋 康次 (ニッセイ基礎研究所)

「自粛期間」が長引けば、今後、様々な問題が顕在化する可能性がある。政府の要請に従って中止や延期をした損失は補填されるのか、労働者が感染懸念から出社しなかった場合には所得が補償されるのか。そのような企業や個人を支えることはできるのか。早急に対応する必要がある。

新型コロナウイルスの感染地域は世界に拡大し、各国ともに対策を急いでいる。各国は同じ悩みを抱えているが、現在の日本の経済対策は、規模と内容の両面で見劣りしている[図表2]。社会的にインパクトの大きい感染拡大防止措置を取った英断を活かすためにも、予想される経済へのダメージを可能な限り抑える対策を早急に策定し、実施する必要がある。

足もと、追加の緊急対策を策定する動きが進んでいる。27日には、与党自民党および公明党が、新型コロナウイルス対策の追加提言をそれぞれとりまとめた。報道によれば1、追加提言の内容は、医療体制の整備や政府による情報発信体制の強化が柱となっているようだ。経済対策としては、既に影響が顕在化している中小企業の資金繰りを支援するため、融資上限の引き上げや対象業種の拡大などが盛り込まれると見られる。また、自民党は今後、経済団体や業界団体から意見聴取を行ったうえで、経済への悪影響を最低限に抑制するための提言も取りまとめる方針とされる2。新型コロナウイルス対策で先行する他国の取り組みを参考にしつつ、感染拡大の抑止と国民生活や企業活動を守るための対策を、迅速かつ先んじて準備してほしい。後に振り返って余分な対策だったと言われることもあり得るが、不十分な対策で深刻な影響が出てしまってからでは、経済の立ち直りは困難を極める。

yajima2.jpg


1 日本経済新聞「自民「休業企業の支援」、公明「休校の影響配慮」 与党が新型コロナで追加提言」(2020年2月27日)
2 時事ドットコム「自民、デマ防止へ対外発信を 公明は首相会見提言―新型肺炎」(2020年2月27日)

nissei.jpg[執筆者]
矢嶋 康次 (やじま やすひで)
ニッセイ基礎研究所
総合政策研究部 研究理事
チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米コロンビア大の学生逮捕、親パレスチナデモに関与

ビジネス

経常収支、1月は2年ぶり赤字 春節と円安が影響

ビジネス

トヨタ、10日午前から国内2工場3ライン・午後から

ワールド

韓国検察、釈放後も尹大統領の刑事責任を公判で追及へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 9
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中