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新型コロナウイルス

韓国で感染爆発を招いた2つの病魔──新興宗教と保守政治家

God's Plan

2020年3月20日(金)09時10分
クリストファー・カトゥーキ(韓国慶尚南道教育庁客員教員)

4月に総選挙を控える文在寅大統領だが(大邱) Yonhap-REUTERS

<感染者が数日間で30倍に爆増、政治と宗教が文在寅政権の足を引っ張る>

中国のすぐ近くに位置するにもかかわらず、韓国は新型コロナウイルスの感染拡大を、比較的うまく抑えていた。

2月13日の時点で確認されていた感染者数は30人以下。新たな感染者はもう4日も確認されていなかった。安心した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、ウイルスは「いずれ消えるだろう」とまで言っていた。

あれから1カ月。今や韓国の感染者数は約8000人、死者は65人を超えた。爆発的な感染拡大の中心となった大邱は新たな武漢と呼ばれ、世界91カ国以上が韓国からの旅行者の入国を禁止したり、制限している。

なぜ事態がこんなに急に悪化したのか。その問いに答えるカギは、韓国にはびこる新興宗教団体と、こんな危機さえ政治的に利用しようとする保守派の戦略がある。

新型コロナウイルスを封じ込めたという文の確信は、31人目の感染者によって打ち砕かれた。この人物は新興宗教団体「新天地イエス教会」の信者で、同教会の中国の拠点で感染したらしい。

大邱では、高熱とインフルエンザに似た症状がある人は、自己隔離をするよう警告が出ていたにもかかわらず、この女性(氏名は明かされていない)は、教会の大規模な集まりに参加。その結果、女性の感染が確認された数日後には、韓国の感染者数は1000人に跳ね上がった。

新天地イエス教会は、創設者の李萬熙(イ・マンヒ)をイエス・キリストの再来と見なすカルト教団で、信者はそれを信じる証しとして、マスクの着用を控えるよう命じられ、体調を崩しても礼拝出席を強いられることもあった。感染爆発を引き起こした後も、当局に虚偽の信者名簿を提出するなど悪質な態度が目立つ。

韓国の政治社会のスキャンダルに、新興宗教団体が関与していたことが明らかになるのは、珍しいことではない。朴槿恵(パク・クネ)元大統領が弾劾・罷免されたのは、精神的に頼りにしていた崔順実(チェ・スンシル)を国政に関与させ、国家機密を漏洩したとされるためだ。崔は新興宗教団体「大韓救国宣教団」の創設者の娘だ。

政争に利用する保守派

途上国から先進国へと急激な発展を遂げた韓国では、変化に付いていけない人々が心のよりどころを求め、カルト教団が次々と誕生してきた。しかし政府が国民の反感を恐れて、ほとんど規制をしてこなかったため、新天地イエス教会のように信者に非常識な要求をする教団も多い。そうした問題が、新型コロナウイルス危機で一気に露呈した。

保守派政治家の非協力的な態度も、今回の危機を悪化させた原因の1つだ。朴の劇的な失墜に衝撃を受けた保守派陣営は、革新派の文政権をたたくチャンスをうかがってきた。だから、文が中国人の入国を全面禁止しなかったことを厳しく攻撃し、感染が拡大したことについて国民に謝罪しろと要求する声も強い。

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