トランプの中東和平案は、イスラエル占領を既成事実化する「トロイの木馬」
Trump’s Trojan-Horse Peace Plan
国際社会の微妙な反応
トランプ政権はアメリカの70年間の外交政策を覆し、長年の国際合意を無視して、エルサレムをイスラエルの首都と認めた。2019年3月には、イスラエルが第3次中東戦争で占領したゴラン高原について主権を認めた。11月には、ヨルダン川西岸のイスラエルの入植活動は国際法違反ではないという見解を示している。
アラブ社会の反応は分かれているが、サウジアラビアやエジプトはいち早くトランプ案を評価する声明を出した。ボリス・ジョンソン英首相など、多くの指導者も支持を表明している。
ただし、アラブ社会とヨーロッパの指導者が、外交辞令だけでなく積極的に今回の和平案を受け入れるつもりかどうかは、まだ不透明だ。
和平案が形としては2国家共存を掲げている点を強調して、前向きな内容は少なくとも検討するべきだという主張もあるだろう。
ただし、それは、地域の外交システムがトロイの木馬に感染して、真の2国家共存に基づく和平の可能性が完全につぶれることを意味する。それを許すのは、無知か、無関心か、無責任でしかない。
感染を確実に防ぐ方法は、危険なプログラムを開かないこと。それに尽きる。
<本誌2020年2月11日号掲載>
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