モサド元長官が日本人へ語る「組織を率いる心得」
そうストレートに問うと、パルドは笑って、「凄腕かどうか、自分たちで評価することはしたくない」と答えた。「私たちは、有能な人たちであり、私たちの機関も、有能な機関なのだ。ただ他の機関を評価することもしないし、他の人たちから評価されたくもない。ただし、モサドが優れているのは間違いない」
そんな組織を率いてきたパルドにとって、「リーダーの心得」とはどういうものなのか。
解決策を見つけるには?
モサドでは、組織に自分たちの置かれた立場をはっきりと認識させ、それを徹底している。パルドはモサドの場合、「強くなる以外、私たちには選択肢がなかった。それに尽きる」という。その考えを共有し、組織を動かしていく。そして組織に、アイデアを捻り出すよう求める。
「壁際に追い詰められ、何らかの対処をしなければならない。そういう状況下では、クリエーティブになって、解決策を見つける必要がある。例えば、サイバー攻撃は、そうした状況に対応するのに、まさに優れたツールだと言える」
つまり、組織には問題がつきものであり、リーダーはそうした課題に対して組織にクリエーティブに考えるよう促す。
では、パルドにとって優れたリーダーとはどういう人なのか。
「自分自身を評価するようなことはしたくないが、優れたリーダーとはこうだ。他のどんな組織も同じかもしれないが、モサドのような組織を取り仕切るのは、100個のスタートアップ企業を毎日運営しているようなものだ。多くの問題に対処し、すぐに解決策を出さなければいけない。そのためには、常にリラックスしている必要があるし、謙虚であるべきだ」
さらにこう付け加える。「地球が自分中心に回っているのではないことを理解すべきだ。他にも人がいて、一緒に働く人たちがもつ経験を生かす準備ができていなければならない。チームとして、大きなチームとして働いていることを理解しなければいけない。正しい時に正しい解決策を、ともに導き出さなければならない」
こうした自覚を持てる人が、リーダーの条件であるとパルドは主張した。「何年もモサド長官の職にあり、仕事で数多くの経験をした。みんなの経験をひとつにできれば、ベストと言えるシステムが出来上がるのだ」
拙著『世界のスパイに食い物にされる日本』ではこの他、CIA(米中央情報局)やMI6(秘密情報部)など世界の凄腕諜報機関の中で翻弄される日本の現状についても記している。