ネットに飛び交うニセ情報に危機感 新型コロナウイルス感染ゼロ続くインドネシア
これまでに54事例を確認、通信情報省
インドネシアの通信情報省は2月3日、これまでに掌握した新型肺炎に関する偽ニュースや誤情報が合計で54件にのぼることを明らかにした。これは新型肺炎の拡大が深刻化した1月23日から2月3日までの約10日間に主にインドネシアのSNSで流れたもので、中には「インドネシアではすでに死亡した感染者がいる」とか「ニンニクを煮てそれを飲めば感染が治癒する」などというものがあるという。
繰り返すがインドネシア国内では外国人を含めてこれまでに感染が確認された患者は1人もおらず、また今回の新型肺炎の治療に効果があるというワクチンも薬もこれまでのところ確認されていない。
3日に会見したジョニ・ゲラルド・プラテ通信情報相は「なんら証明されていない情報を信用しないように、振り回されないように」と疑心暗鬼になりかねない情報について国民に対して重ねて注意を呼びかけた。
そのうえで「通信情報省としてもこうした偽ニュースや誤情報を発信・拡散しているSNSのサイトに対してブロックや閉鎖という対応策を講じることも検討している」と今後は強い姿勢で臨む方針を示し「今後警察のサイバー部門などと協力していきたい」との立場を明らかにした。
通信情報省では新型肺炎に関する偽ニュースや誤情報については「同省のホームページを参照してほしい」とPRしている。
人口約2億6000万人のインドネシアではネット利用者が約1億5000万人とされ、SNSの影響力はマスコミ以上に大きいのが現状だ。
また携帯電話の普及は約3億4000万台に達している。それだけに、ジョコ・ウィドド政権は新型肺炎に関する情報、ニュースが正確に国民に伝わることがなにより重要との立場から、偽ニュース・誤情報対策についても警察を含めた関係当局に対して厳格な対応を求めている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。