ネットに飛び交うニセ情報に危機感 新型コロナウイルス感染ゼロ続くインドネシア
新型コロナウイルスの感染者がいまだゼロのインドネシアでも、SNSを通じたデマや偽情報の感染は猛威を振るっている。写真は中国との航空便の運行停止措置がとられる前日のインドネシアの空港 Antana Foto Agency - REUTERS
<世界に感染が広がるコロナウイルス。周辺各国に感染者が現れるなか、安全な国までも、その恐怖ゆえに偽の情報が飛び交い始めた>
中国・武漢から広まり感染者が次々と報告されている新型コロナウィルスによる肺炎は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の間にも拡大。2月5日現在いまだに「感染者ゼロ」を続けているインドネシアで今、ネットユーザーなどによる偽ニュース、誤情報の蔓延が大きな問題となっている。
インドネシアは、世界的観光地であるバリ島や世界遺産であるジャワ島・ボロブドール寺院などがあり、1月25日からの旧正月(春節)の休暇では多くの中国人観光客が訪問した。
これまでのところ新型肺炎のウイルスで感染の疑いがある患者は複数報告されているものの、検査の結果陽性となった患者は報告されていない。
ただ、バリ島にはこれまでに中国人観光客約5000人(この中には武漢からの旅行者約200人が含まれている)が中国本土への帰国便が運航中止になったことから取り残される事態となっており、今後の観察、検査で感染者が発見される可能性も残されている。
インドネシア保健省などは感染の疑わしき症例数や現在隔離して要観察状態にある患者数などを定期的に公表している訳ではなく、各報道機関が独自に数字を伝えているのが実状だ。
ジョコ・ウィドド大統領やテラワン・アグス・プトラント保健相らは「インドネシアでの感染確認者はゼロ」を強調する一方、国民に新型肺炎への警戒を呼びかけ、入国管理局や衛生局、総合病院から地方のクリニックまで万全の態勢をとるよう繰り返し指示を出している。
偽情報で女性2人を逮捕
そうしたなか、2月4日カリマンタン島東カリマンタンの州都バリクパパンの同州警察サイバ―犯罪捜査課はバリクパパン在住の女性2人を新型肺炎に関する偽情報をネット上に流した容疑で逮捕したと発表した。
警察は容疑者2人を名前のイニシャルでしか公表していないが、FS(39)とKR(年齢非公表)の2人で、お互いに顔見知りではないという。
2人はそれぞれネット上のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サイトであるFace Bookに「バリクパパンの病院で新型肺炎の感染者が治療を受けている」と事実に反する書き込みをしてこの偽情報を拡散させた容疑がもたれている。
「ジャワ・ポス」紙によると、2人は警察の取り調べに対して「バリクパパンの人々に新型肺炎に対する注意と警戒をしてもらいたかった」と動機を述べており、共に「逮捕されるような事態になるとは思ってもいなかった」と話しているという。
インドネシア政府は3日に「新型肺炎に関する偽ニュースや誤情報については厳重に取り締まる」との方針を明らかにしたばかりだった。
今回逮捕に際して適用されたのは「情報電子商取引法(ITE)」違反の偽ニュース・誤情報流布容疑で、人権団体などが治安当局による恣意的運用で「表現の自由や報道の自由が脅かされる危険がある」と批判していた法律である。
今回逮捕された2人の女性は今後起訴されて裁判で有罪となれば、最高で6年の禁固刑が待っているという。