日本一「日本」を伝える中国SNSの女神「林萍在日本」
東京、北海道、京都など各地を紹介したり、商品をPRしたりするだけでなく、商品ブランディングも手掛ける(写真は、孫が企画に携わった温泉成分配合のシャンプー「ONSENSOU」) COURTESY OF LINPING ZAI RIBEN
<「林萍在日本(リンピンツァイリーベン)」として活躍する孫竹婷は、フォロワー540万人超と芸能人並みの影響力。在日中国人インフルエンサーの中でNo.1だ。その地位に至った経緯、日本への思い、インフルエンサー業の苦労......全て聞いた。本誌「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集より>
「ほんの1~2年前までは取り上げたいと申し込んでも無視されてばかり。それが今では断られることがほとんどない。先日もミシュランの星を獲得した飲食店に申し込んだら、すぐにOKが出た」
そう話すのは孫竹婷(ソン・チューティン、36歳)。「林萍在日本(リンピンツァイリーベン)」というハンドルネームで活躍する日本在住の中国人インフルエンサーだ。商品や観光地をSNSで紹介することが主な収入源だが、依頼がなくても面白いと思った日本の情報を集めては中国のファンに届けている。
以前は取材するのも一苦労だったというが、インスタグラマーなどのインフルエンサーが市民権を得た今では反応が違う。
加えて、日本の企業や観光地にとって中国人はぜひとも来てもらいたい対象だ。日本を訪問した中国人は2019年には950万人を突破し、存在感を高めている。
中国版ツイッターと呼ばれる微博(ウェイボー)で、孫のフォロワー数は540万人超。数百人はいると推測される在日中国人インフルエンサーの中で最も多く、その影響力は芸能人並みかそれ以上だ。
2019年11月に東京で開催された「微博日本群英会2019」は芸能人が多数出席したイベントだが、孫もディーン・フジオカや高橋愛ら日本の芸能人と共にレッドカーペットに登場している。
「こんなふうになるなんて思ってもみなかった。私は普通の子供だったから」
孫は江蘇省蘇州市の出身。両親は共に国有企業の従業員で平凡な家庭の出身だったという。転機が訪れたのは2008年のリーマン・ショックだった。勤務先の米系会計事務所が中国から撤退したのを機に、日本語の勉強を始めた。
「日本映画が大好き。黒沢清監督の『トウキョウソナタ』とか。字幕が付いていない日本映画も見られるようになりたいなと思って」
日本語を習得後、在中の日系メディア関連会社に転職するが、仕事の傍らで始めていたのが微博での日本情報の発信だ。
尖閣諸島問題で日中関係が悪化したのを受け、中国メディアは日本のトレンド情報発信を控えるようになった。その結果、日本カルチャーが好きな人が情報に飢えるように。こうしてメディアの代わりに日本情報を伝えるSNSアカウントがいくつも現れる。孫もその1人だった。