最新記事

インドネシア

SB孫会長、ブレア元英首相らインドネシア首都移転の「顔」に 投資期待も移転は実現可能?

2020年1月21日(火)18時05分
大塚智彦(PanAsiaNews)

首都移転にコミットすることになった孫正義は、昨年7月にインドネシアを訪問、ジョコ・ウィドド大統領と会談をしていた Antana Foto Agency - REUTERS

<2024年に首都を移転すると発表したインドネシア政府が、その運営委員として孫正義をはじめ、著名政治家、実業家を発表したが──>

インドネシア政府が進めている首都移転問題に関連してソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が移転を促進する運営委員会の委員に任命され、国際社会からの移転費用を賄う投資促進の「引き立て役」としての役割を担うことが明らかになった。孫会長は委員就任と同時に、自らも首都移転に多額の投資を行う方針も示しており、日本企業が首都移転に一役買うことになった。

1月17日、インドネシア政府のルフト・パンジャイタン海事・投資担当調整相は記者団に対し「ソフトバンクの孫会長が首都移転関連の運営委員会のメンバーに任命された」ことを明らかにするとともに「孫会長から300~400億ドル(約3兆3000億円~4兆4000億円)規模の投資をするとの提案を受けた」と明らかにした。

孫会長はこれに先立つ10日にジャカルタを訪問してルフト調整相やジョコ・ウィドド大統領と会談。インドネシア政府が2019年8月に正式に表明した現在のジャカルタからカリマンタン島東カリマンタン州への首都移転計画への協力に関して協議をおこなった。

首都移転の経費についてインドネシア政府は総額で約466兆ルピア(約3兆7500億円)と試算しているが、あまりにも巨額なため国庫からの支出は19%に留め、残りを官民協力や国外を含めた民間投資で賄いたいとしている。

特に海外からの投資を呼び込むために国際的な著名人を運営委員会のメンバーに任命して、首都移転の「顔」として投資誘致に結び付けたい意向がジョコ・ウィドド政権にはある。

このため委員会のメンバーには孫会長のほか、英国のトニー・ブレア元首相、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・アブダビ皇太子もメンバーに任命されたことが明らかにされた。

孫会長の投資案、ソフトバンクは金額確認せず

ルフト調整相が明らかにした孫会長からの首都移転に関するインドネシア側への「300億~400億ドル」という投資額についてソフトバンク側はメディアに対して「具体的な金額は提示していない」と否定している。

しかし、孫会長とジョコ・ウィドド大統領やルフト調整相との直接会談では首都移転計画へのソフトバンクの具体的な強力に関して突っ込んだ協議が行われたとインドネシア側は強調しており、「具体的な投資額に関しては最終的合意には至っていないのだろうが、インドネシア側が期待を込めて具体的金額をマスコミに漏らしたのではないか」との観測が強まっている。

移転に関わる海外からの投資誘致を図る運営員会についても「孫会長らは国際社会からの信頼のためであり、投資呼び込みのための顔役となってほしい」(ルフト調整相)と期待を示しているが、孫会長やブレア元英首相らの具体的な役割や活動についてはまだ何も決まっていないのが現状だ。とりあえず国際的な著名人をメンバーに任命することで信用度を高めたいとのインドネシア側の思惑が見え隠れしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中