新型コロナウイルスはなぜ感染拡大したか 検査・治療が後手にまわった武漢の実態
重い患者も検査リスト外
湖北省CDCの職員によれば、武漢市最大級の病院のうち7カ所にはすでにコロナウィルス検査キットが配布されており、理論上は1日以内に結果が出るという。
だが、ロイターの取材に応じた4人は、検査プロセスには病院、地区及び市の保健当局、CDC当局者が関与する複雑な報告体制が伴うことを理由に、検査を断られたと話す。
患者が検査を受けるには、発熱・肺炎の症状などいくつかの基準を満たすことが必要とされるが、武漢市疾病管理・予防センター当局者によると、患者が急増しているため「検査をすぐに行うことは不可能」になっているという。
「症状の重い患者でも、最終の検査リストから外されている例がある。もう治療できないと分かっているからだ」と、ある病院の職員は話す。「実際の死亡数はもっと多い」
ロイターは、この職員の証言の裏付けを取ることができなかった。武漢市の保健当局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
検査での感染確認は5%程度
母親が検査待ちを続けているツァンさんによれば、武漢市内の病院3カ所の医師たちは家族に対し、コロナウイルスに感染していることはほぼ確実だ、と非公式に告げたにもかかわらず、このうち2カ所の病院は検査キットが不足していると言い、残りの1カ所は、検査を受けさせるための空きベッドがない、と伝えたという。
ロイターでは病院にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
69歳のスー・エネンさんは、1月8日から熱と肺感染の症状が出ていたが、武漢市内6カ所の病院で検査を断られた。ロイターの取材に応じたスーさんの娘によれば、ベッドが空いていないというのが理由だったという。このところスーさんの症状は悪化しており、呼吸困難に陥りつつあるという。
娘が父の症状について微博に投稿した後、彼は1月22日になってようやく、武漢市の漢口病院で検査待ちの列に加わることを認められた。
英ランカスター大学の研究者らは、武漢市内の感染者のうち、検査によって確認されているのは5.1%にすぎないと試算している。その試算によれば、年初から1月21日までに、武漢市のコロナウイルス感染者は合計1万1341人に達しているという。
同市の保健当局によれば、武漢市内では3万人以上が経過観察の対象となっている。
武漢市に住むリュウという姓の33歳の女性は、「我々が望んでいるのは、症状がウイルスによるものか確認することだけだ」と話す。
彼女の父親は、1月14日から病院で人工呼吸器をつけているが、27日の時点でまだ検査を受けていない。
「少なくとも、ウイルスであると確認できれば方向が見える」と、女性は言う。「何の方向も与えられなければ希望もない」
(翻訳:エァクレーレン)
[北京 ロイター]
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