ゴーンの切手まであるレバノンからどうやって被告を取り戻す?
記者会見で、ゴーン被告はフランスの捜査には協力するといったが、レバノンに捜査員がいけばそうするだろうが、フランスに来るかどうかはわからない。オマーンでのルノー販売会社への支払いやベルサイユでの結婚披露宴や誕生日会の疑惑などについて、予審が始まっており、汚職財務税務犯罪対策中央局(OCLCIFF)が捜査している。オランダの会社についても調べており、当然、この2つの容疑の他にも闇の金の流れが続々明らかになるに相違ない。そうなると仏当局による身柄拘束も考えられる。たしかに、フランスの刑務所にはVIP用の房があり、小菅拘置所よりは住みやすいのだろうが、レバノンの自宅(日産が買ったもの)で65000ユーロ(800万円)のシャンデリアのもとで食事しているゴーン被告には耐えられないだろう。身柄拘束されなくても出国禁止になる公算は大きいから「故郷」レバノンには行けなる。
レバノンを出ればただの疫病神
「赤手配」になっている限り、レバノンから出るとただの疫病神にすぎないから、その場で逮捕され、日本に送られてしまうだろう。
そんなこともあって、8日の記者会見では「小さな牢獄から(レバノンという)大きな牢獄に移っただけではないですか」という質問もあった。
ゴーン被告にむざむざと出国され言いたい放題された日本政府としては、国家の威信をかけてもゴーン氏を取り戻さなければならないところだろう。だが、国際条約違反などといくら叫んでも、レバノン司法当局が動くことはないだろう。
ただし、いま、レバノンでは大きな反政府運動が起きている。ちょうどフランスの黄色いベスト運動のように、割られたショーウインドーに「くたばれ資本主義」の落書きが書かれている。国民の3分の1にあたる220万人が参加しているといわれ、内閣総辞職の事態に陥っている。
レバノンの3人の弁護士が、ゴーン被告がイスラエルに入国したことを国家反逆罪であるとして告発した(レバノンとイスラエルは戦争状態が終わっていない)が、1年前なら考えられなかったことだ。
こういった状況をうまく利用すればひょっとしてということもあるかもしれない。日本政府の外交手腕が試されている。
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