文在寅の成績表:これといった成果なくレームダックが懸念だが...
STRAIGHT OUTTA DMZ=非武装地帯から来たけど文句あるか ILLUSTRATION BY ROB ROGERS FOR NEWSWEEK JAPAN
<任期半ばを過ぎた韓国大統領は「良くやっている」のか? リーダーとしての能力と資質から韓国政治を読み解く。世界の首脳を査定した本誌「首脳の成績表」特集より>
レームダックに陥るかどうか。2017年5月の就任から任期半ばを過ぎた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、来年本当の正念場を迎える。1期5年制で再選がない韓国の大統領は、歴代経験者を振り返ると、ほぼ任期半ばから3年を過ぎたあたりで急速にレームダック化するのが宿命だ。
ただ、文本人にはそれほどの覚悟は感じられない。「現状のまま任期まで突っ走るし、それができる」(大統領府関係者)という、妙な自信さえ感じられる。
前大統領の弾劾という前代未聞の事態を受けて大統領になった文は、過去の保守政権の「積弊」、すなわち積み重なった悪弊を一掃し、クリーンで公正な社会をつくるとぶち上げた。が、その公約は既に疑わしい。
2019年10月の韓国の世論調査によれば、文政権の実績評価について、「良くやっている」で多かったのは「改革」(政治的な不公正さの是正、権力機関への監視)が18.9%で最多。次に「福祉」(基礎生活、医療、老後への施策)が15.5%となっている。
一方、「良くやっていない」の筆頭は「経済」だ(16.6%)。2017年に世界経済の先行きが怪しくなり、若年層を中心とする就職難などへの不満が文を大統領に押し上げた側面があった。
だが、最低賃金引き上げを中心とする「所得主導経済」は、財界、特に中小企業や自営業者などから強い反発を受けた。妥協はしながらも最低賃金を引き上げたが、その結果、企業は人件費の増加に耐え切れず、雇用ができなくなり倒産するケースも相次いでいる。現在の経済政策の変更を強く求める声も絶えない。
さらに、3回の南北首脳会談を実現した朝鮮半島政策への評価も渋く、「誤った政策」の3位(13.6%)に。北朝鮮に批判的な保守層と、政権の支持基盤で北に融和的な進歩(革新)層との両極化を促してしまった側面がある。
確かに、実際に対話はしたものの、北朝鮮の非核化や具体的な経済協力事業にはつながっていない。逆に、「文は約束を守らない」と、北朝鮮の信用を失っている。