キャッシュレス化が進んだ韓国、その狙いは何だったのか?
政府も手数料無料のモバイル決済サービスを始めている韓国 KBS-YouTube
<韓国はキャッシュレス決済が90%を超えるキャッシュレス大国。その歴史と実情は......>
韓国与党・共に民主党の朴光温(パク・グァンオン)議員は、2019年10月31日、日本製品不買運動の状況として、カード会社8社から提出された韓国ユニクロのカード売上額現況を公表した。韓国ユニクロは個別売上を公にしていないが、カード売上を見れば現状が把握できるのである。
この例でわかるように韓国はキャッシュレス大国。個人消費の75%をカード決済が占め、キャッシュレスが90%を超える。こうしてカード会社間の競争やキャッシュレスの多様化が進んでいるいっぽう、課題も生じている。
97年通貨危機の後、消費の活性化、税収確保の目的で一気に進む
韓国銀行が2017年と18年に行なった調査で98.2%が現金を携行していたが、平均所持額は7万3000ウォン(約6700円)で、自宅やオフィス等に現金を保管している人は23.3%だった。30代から50代の90%以上がカードを利用し、さらに20代と30代のおよそ40%が電子マネーやモバイル決済を利用していた。
韓国のキャッシュレス化のスタートは1997年に遡る。いわゆるIMF通貨危機の後、政府は消費活動を活発化させ、税収を確保する方策としてクレジットカードの普及を促進した。カード会社は無利子割賦を提供するなど、高額商品の購入を後押しする。カードの決済情報は国税庁に提出され、税収の基礎データとなる。
また、韓国政府は北朝鮮のテロ対策として導入している個人を識別する住民番号を活用した与信の拡大や300万ウォンを上限にカード利用額の20%を控除するカード所得控除、カード利用に抽選番号を付与した宝くじなどを導入。カード所得控除は2012年の税制改正で15%に引き下げられ、19年3月で廃止する予定だったが、3年間の延長が決定している。
脱税も防げるカード決済
韓国の小売店など1000ウォン(約91.2円)以上の買物はカード決済への対応が原則だ。市中の商店で値段交渉を行うと、現金なら値引きに応じるがカードは税金がかかるから安くできないと言われることは珍しくない。現金なら脱税できるがカード払いは課税を逃れられないというのだ。
企業等の接待交際費は企業カードの支払いのみが経費として認められ、現金で支払った交際費は使徒不明金として扱われるなど、一部の取引はカード払いが義務付けられるが、利用する飲食店等の脱税を防ぐために導入された制度である。
個人がカードで支払った決済情報は所得控除に反映される。企業間取引は、決済の都度、消費税に相当する付加価値税10%の手続きが義務付けられるが、カードの決済情報と合わせて計算され、申告手続を簡便にすると同時に税収に活用されている。