ソルリの死を無駄にはしない 韓国に拡がる悪質コメント禁止の動き
悲劇は繰り返されてきた
過去10年間に亡くなった芸能人で、悪質書き込みが原因の自殺だった例を見てみると、日本でも一時期活躍していた女性シンガーU;Nee、同性愛者とカミングアウト後にネット上の中傷書き込みで自殺に追い込まれた俳優キム・ジフ。また、2008年に人気女優チェ・ジンシルが自殺した事件は国内に大きな衝撃を与えた。彼女をめぐっては「前月に自殺した俳優アン・ジェファンに金を貸していた」「裏で金融業をしている」といった誹謗中傷がネット上に流れていた。さらに彼女の周辺では、その2年後には実弟テェ・ジニョン、2013年には元夫で読売ジャイアンツで投手として活躍したこともあったチョ・ソンミンも自殺するなど不幸が続いた。
また、今年の5月に自宅で意識不明の状態で発見された元KARAのメンバー、ク・ハラの事件は記憶に新しい。元交際相手からのリベンジポルノと美容整形に関するネット上での悪質書き込みが自殺未遂の原因だと言われている。その他、ネット上での誹謗中傷を受け、鬱病発症や、生活に影響が出ていると発表している芸能人は多い。
悪質コメントめぐり法規制やネット企業が対策へ
このように、大きな社会問題にまで発展しているネットでの悪質な書き込みについて、法律で取り締るべきだ、という世論の声が高まっている。正しい未来党のパク・ソンスク議員は、10月25日にポータルサイトを含む情報通信サービス提供者に、誹謗中傷表現を削除する義務を追加した「情報通信網利用促進及び保護に関する法律一部改訂案」を発議した。続いて、自由韓国党のパク・テチュル議員も、国政監視へ今回の悪質書き込みを指摘し、これの根絶と処罰を強化する法律の改正案発議を発表した。これらの禁止法については、亡くなったソルリの名前を取って「ソルリ法」という通称で一般化し始めている。政府内でもこの問題を重く見ており、パク・ヤンウ文化体育観光部長官は、質疑の場で「(悪質書き込みによる自殺に関し)責任感を感じている」と公式発言し大きく報道された。
このままではいけないと、ネット関連企業も悪質書き込み対策に取り組みだした。韓国ポータルサイト2位daumを運営するカカオは、芸能ニュース記事のコメント欄を閉鎖することを10月末に発表した。ニュースを見た一般人がそのニュース記事の下に意見を書き込めるようになっていたが、誹謗中傷コメントが多かったため、この部分をサイトから削除したのだ。また、韓国最大のポータルサイトNAVERも、AIが悪質なコメントを自動で削除するシステムを、ニュース記事全体に使用することにした。以前から特定の差別用語などを「○○○」という表示に隠す技術はあったが、今回導入されたAI「クルリンボッ」は、文脈などからも学習・判断したうえで不適切なコメントを批評時にするという。