ストレス耐性は就学前に決まる? 産業医が見た「ストレスに強い人」が共有する経験
ストレスに強い大人は、子ども時代の過ごし方が大きく影響しているという。 kohei_hara-iStock
<学生時代のエリートが社会に出て挫折するのには深い理由があった>
日々、産業医として診察をしていると、学生時代に優秀だった人が、社会人になってストレスに悩み、心身ともに疲弊し潰れてしまうというケースを見かけます。一方、学生時代には目立った成績ではなかった、クラスの平均かそれ以下だった人が、社会人になり結果をしっかり出し、人望も厚くどんどん昇進していくこともあります。
この違いはどこにあるでしょうか。産業医として、通算1万人以上と面談するなかで見えてきたのは、子ども(学生)時代の過ごし方に影響しているということでした。
どのような子ども(学生)時代を過ごし、どのようなスキルを磨けば高いストレス耐性が身に付くのか、ここにお話しさせていただきます。
認知能力を超える非認知能力を持っている
比較的ストレスに強い人に子ども時代について聞いてみると、多くの人が、認知能力だけでなく、非認知能力を継続的に育まれてきたという共通点がありました。
認知能力とは、テストの点数や偏差値、IQなど、数字で測定可能で、従来の学校教育等で重点が置かれてきたものです。ハードスキルとも言われ、言われたことをやる、過去問、塾や予備校、丸暗記などの時間効率がよい勉強によって得られやすい特徴があります。
一方、非認知能力はソフトスキルとも言われるようなものです。数字だけでは測れない、総合的人間力を意味します。
勤勉性、外向性、協調性、精神的安定性などが代表的ですが、ほかに、まじめさ、好奇心、社交性、利他性、自己肯定感、責任感、想像力、やり抜く力、自主性、積極性、コミュニケーション力、共感力、柔軟性、忍耐力など。さまざまなものがあります。
なぜ"総合的"と呼ぶかというと、例えば、回復力(レジリエンシー)に優れる人がいたとして、その人は回復力に優れるという1点だけで、メンタルヘルス不調になりにくいのではありません。
そのような人は多くの場合、職場で日頃から上手にコミュニケーションを行っていたり、わからないことを人に聞く素直さや謙虚さ、また、周囲を巻き込む行動力、そして自身の試行錯誤ややり抜く力など、さまざまな要素を持っていたりします。そのため、そもそも回復力をそこまで要さない、要したとしても周囲がサポートしやすい人なのです。非認知能力とは、このように複合的なものなのです。