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絶望の縮図シエラレオネに希望を探し求めて

Hopelessness and Hope

2019年11月1日(金)18時10分
サム・ヒル(作家、コンサルタント)

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筆者( 写真右、中央の人物)とジェニバの夫と娘、孫たち(一家の自宅の前で) COURTESY OF SAM HILL

途上国の人たちの生活はあまりに過酷で、人々が感じている絶望はあまりに深い。大学卒の学歴の持ち主ですら、他国に移住して床清掃の仕事に就きたいと訴えるくらいなのだ。

私たちに残されている時間は少ない。今のところエボラは管理下にあるが、「次のエイズ」や「次のエボラ」がいつ流行しても不思議でない。

軍や警察の上層部は、新たな内戦の勃発も心配している。ある国際セキュリティーコンサルタントから聞いた話によれば、イスラム過激派武装勢力ボコ・ハラムがシエラレオネに進出し始めている可能性もある。

貧しい途上国はどこも、深刻な不安材料を抱えている。問題を解決するために必要なのは、援助ではなく、強力な民間セクターに基盤を置いた経済を築くことだ。生活環境が改善すれば、人々を国外移住へ突き動かす力が弱まり、人口爆発や環境汚染などの問題も解決しやすくなる。

そのような経済は、援助関係者や官僚では築けない。ルワンダが成功した一因は、アメリカの財界リーダーたちの力を借りたことにあった。

シエラレオネに変化が訪れるのは遠い先になりそうだ。私が帰りの準備をしていると、ジェニバが私を部屋の隅に引っ張っていき、アメリカに連れて行ってくれと言った。

私はその求めに応じず、西洋人が過去数百年にわたりやってきたのと同じことをした。彼女の手に100ドル札を握らせたのだ。それが彼女を救うとは思えなかったが。

<2019年11月5日号掲載>

【参考記事】解放後も少年兵を苦しめ続ける心の傷と偏見
【参考記事】ブロックチェーンで「紛争ダイヤモンド」撲滅

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