最新記事

中国

ペンス米副大統領演説と中国の反応を読み解く

2019年10月28日(月)12時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

4.知財権と我が国の国民のプライバシーおよび国家の安全を守るために、アメリカはファーウェイやZTEなどの違法行為を阻止するために世界各国の盟友たちに北京の5Gネットワークを使うなと警告してきた。

(筆者注:2019年4月3日に米国防総省の諮問委員会が発表した報告書「5Gエコシステム:国防総省に対するリスクとチャンス」では、「アメリカは5Gにおいて中国に敗けている」と認めている。この衝撃が今トランプ政権を突き動かしている。)

5.中国政府は中国人民の宗教の自由を圧迫し、100万人のウィグル・ムスリム(イスラム教徒)たちを監禁・迫害している。そのため先月、トランプ大統領は中国の監視等に関わる公安部門と8つの企業に制裁を加えた。

(筆者注:トランプ政権は今年10月7日、中国の監視カメラ大手ハイクビジョンや公安機関など28団体・企業をエンティティー・リストに追加した。その企業の中には中国のAI国家戦略の指定企業BATISの中のアイフライテックやセンスタイムが入っている。特にセンスタイムはAI顔認証に関して世界のトップに躍り出た企業だ。)

6.台湾は中華文化における民主と自由の灯台の一つだ。アメリカは、より多くの武器売却等によって台湾を支える。香港も数百万の民衆が自由と民主を求めてデモを行っている。香港民衆の権利は1984年の「中英共同声明」によって明らかにされている。アメリカは香港市民のためにメッセージを発し続ける。

7.それでもなお、トランプ大統領は、米中貿易協議が合意を見ることを希望している。われわれは、新しい段階において、中国がアメリカの農業に関して支持し、かつ今週チリで行われるAPECで両首脳が協議書に署名できることを希望している。

演説は以上の骨子の2倍は続くが、中国関係に関して、一応、ここまでにしておこう。

誰でもが「えっ?」と思うのは「7.」だろう。

ここまで強気で勇ましく中国を非難して、聴衆をスカッとさせておきながら、突如、まるで「米中友好」を支持するかのようなメッセージを発するとは、何ごとか?

中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」も「えっ?」「なに、これ!」と驚いている。

それを読み解く前に、勇ましい外交部の華春瑩(か・しゅんえい)報道官の抗議を見てみよう。

外交部の猛烈な抗議

外交部の華春瑩報道官は、えくぼのある、にこやかな笑顔の持ち主だが、時によっては戦士のような激烈さで抗議を機関銃のようにまくしたてる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

世銀、インド成長率予想を6.3%に下方修正 世界的

ビジネス

中国、外資参入規制を緩和 25年版ネガティブリスト

ワールド

IMFと世銀、基本回帰でトランプ政権の信頼得る必要

ビジネス

中国のボーイング機受領拒否、関税が理由と幹部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中