中国は政治も経済も矛盾だらけ──それでもこの混沌は今後10年変わらない
実力主義の世界では、最終的に誰が組織の規律を守るのかという問題に直面する。リーによれば、中国共産党中央組織部は「人材の宝庫」だ。しかし、人事権を握っているだけに腐敗しやすい。昨年は実に68人が汚職で逮捕されている。
懐疑派の見方も正しくはない。経済成長と社会福祉を推進してきた官僚の実力を正当に評価していない。重慶市書記を務め、2012年に失脚した薄煕来(ボー・シーライ)が格好の例だ。職権の乱用はあったにせよ、薄が貧困にあえぐ住民に公共サービスや手頃な住宅を提供したことも事実だ。
権力闘争の激しい中国では、腐敗と合理主義が共生関係にある。政治家の支持者は公共事業に資金を提供し、人脈を利用して投資を促し、プロジェクトを成功に導く。成功すれば地域は潤い、指導者の実績も増す。
習の反腐敗運動が見落としている重要な現実がある。政治家の仕事は「お友達企業」などに支えられているということだ。
中国では政治も経済も矛盾だらけ。そもそも共産党が資本主義を熱心に推進していることが大いなる矛盾だ。この点は次の10年も変わらない。
<本誌2019年10月29日号掲載>
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