災害での死者数は、なぜ女性の方が多いのか
避難所を忌避する女性が多かったことも考えられる。先日の台風19号の際、ツイッター上で「プライバシーがなく、雑魚寝の避難所には行きたくない」「レイプ被害と隣り合わせ」といった書き込みが散見された。女性と思われる投稿者によるものだ。2016年の熊本地震の避難所で、10代の少女がレイプ被害に遭う事件が実際に起きている。
女性からすれば、公設の避難所は危険であると同時にストレスが多い場所でもある。女性用トイレは男性用の3倍必要というのが国際標準だが、これを満たす避難所はほぼ皆無だ。更衣や入浴等の気苦労も多い。生理用品等のニーズも、男性の運営責任者には言い出しにくい。
災害時の避難所生活のニーズには性差があり、それに応えるには、防災・減災行政に携わる人に女性が増える必要がある。各自治体には、地域防災計画の策定・実施を担う地域防災会議が置かれているが、委員の女性比率は低い。都道府県・市町村会議の委員は全国で4万8397人いるが、うち女性は4275人、8.8%でしかない(2018年4月1日時点)。地域差もあり、47都道府県の数値を高い順に並べると<表2>のようになる。
最も高い鳥取県でも18.9%で2割にも及ばない。女性がほんの数パーセントしかおらず、避難所の運営方針も含めた防災計画の策定が、ほぼ男性だけで行われている県もある。これでは被災者のニーズの性差を反映した計画の立案は難しい。
災害の直接的・間接的な影響で命を落とす比率には性差があり、それは偶然ではなくジェンダーの問題による部分が大きい。命のジェンダー差はデータではっきりと分かる。防災・減災の政策の立案に際しては、ジェンダーの視点が欠かせない。
求められるのは、政策を決めるプロセスに関わる女性を増やすことだ。普段から、偏狭な性役割分業をなくしておくことも必要だ。避難所の共同生活の炊事・洗濯等は、もっぱら女性が担わされているという現状もある。学校等での防災訓練の際には、性別での役割分担をしないように注意することも必要だろう。