最新記事

災害

災害での死者数は、なぜ女性の方が多いのか

2019年10月23日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

全国自治体の防災対策を検討する地域防災会議のメンバーは圧倒的に男性が多い(写真は台風19号に備えて長野で開設された避難所) Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<地域の防災計画の策定にもっと女性が参画しなければ、女性が「災害弱者」となる現状は改善しない>

今月台風19号が猛威を振るい、各地に甚大な被害をもたらした。死者数は83人と報じられている(10月21日時点)。年齢では高齢者が多いと見られ、体力が弱って避難がままならず、スマホ等での情報収集にも慣れていないことが要因になっているのだろう。

男性より女性の死者が多いのは、多くの災害でみられる普遍則だ。2004年のスマトラ沖地震の死者を、インドネシアのアチェという村で調査したところ、女性は男性の3倍で死者の8割が女性だった地区もあるという(大倉瑶子「女性の死者が8割を占めたケースも。災害の死者に女性が多い背景とは」BUSINESS INSIDER、2019年9月1日)。

その要因として、女性や女の子は木登りや水泳に慣れておらず、サバイバルの手段が男性に比して劣っていた、また家族の面倒をみていて逃げ遅れた、ということが挙げられている。災害の死者数の性差は偶然ではなく、社会の文化・慣習、ジェンダーの問題も含んでいる。

ここまで極端ではないにせよ、日本でも同じデータがある。1995年の阪神・淡路大震災の死者は男性が2713人、女性が3980人だった。2011年の東日本大震災の死者は男性7360人、女性8363人でこちらも女性の方が多い。

高齢者に女性が多いためと思われるかもしれないが、実際にはそうではない。<表1>は、性別・年齢層別の死者数を整理したものだ。

data191023-chart01.jpg

ほとんどの年齢層で、男性より女性の死者が多い。右端の女性比率をみると50%超が多くなっている(赤字)。

生産年齢層の死者が「男性<女性」となっていることはベース人口の性差では説明がつかない。震災発生時に在宅率が高く、家の下敷きになったり、育児や介護をしていて逃げようにも逃げれなかった――。そんなケースが男性より女性で多かったと推測される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、0.25%の利下げ決定 昨年12月以来6会

ビジネス

FRB独立性侵害なら「深刻な影響」、独連銀総裁が警

ワールド

核問題巡り平行線、イランと欧州3カ国が外相協議

ビジネス

ユーチューブ、メディア収益でディズニー超えへ AI
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中