中国の圧力に「無条件降伏」したNBAの罪
The NBA Is China’s Willing Tool
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは北京のスモッグの空の下を走り、読めもしない習の著書を褒めた。習に子供の名付け親になってほしいとまで頼んだが、さすがの習も戸惑ったのか、あっさり断わられた。フェイスブックは依然として中国では解禁されていない。
中国は旧ソ連を超えた
こうした傾向は新しいものではない。昔から米企業は、旧ソ連も含めて強権的な国家とのビジネスを好んで進めてきた。労働者の権利が共産主義の下で踏み潰されるのを好ましいことのように捉えたものだ。民主主義と野放しの資本主義が両輪になるという発想は、冷戦時代の幻想でしかない。
だが中国ほどの規模と強引さを兼ね備えた大国は、過去に存在しなかった。旧ソ連は民間企業に敵意を示したが、それを取り込めると認識した中国のほうがはるかに世界を見通している。
最近の企業幹部は、へつらうだけでは足りないのではないかとも感じている。中国では、国粋主義的な感情と政治的な妄想の下で犠牲が求められる。国営テレビ局の中国中央電視台(CCTV)は、ロケッツの試合放映を中止したまま。中国のセレブたちは必死になって、ロケッツから距離を置こうとしている。
一方で、アメリカ人は以前なら見過ごしていたかもしれない今回の事態に注目している。NBAの存在が大きいためもあるだろう。何といってもアメリカ人にとって、バスケットボールは重要だ。アメリカ人は香港の問題よりも、自国内の言論の自由のほうをはるかに気にかけているかもしれない。
中国の力は、たちの悪さを増しつつある。胡錦濤(フー・チンタオ)時代(2003~12年)の中国は、強権的な大国がよりよい未来に向かって、おぼつかない足取りで進んでいるとも言えた。だが今の中国では、100万人以上のウイグル人やチュルク語系少数民族が収容所に入れられ、ネット活動が弾圧され、検閲が強化され、香港で火の手が上がる。胡時代のような楽観はもうできない。
米政府は以前にも増して対抗する気満々のように見受けられるが、当の大統領は立場が相当にまずくなって悪あがきをしている。場当たり的に中国をあげつらうのは、道義性より差別に根差したものに見える。