中国の圧力に「無条件降伏」したNBAの罪
The NBA Is China’s Willing Tool
米企業には中国の検閲に抵抗する力がある。中国に拠点を置かないという選択肢もある。しかし、それを選ぶ企業はほとんどない。
理由の1つは、株主の利益を最大限に高めることが企業の務めだという考えが根強いせいだろう。この考え方でいけば、企業は収益を増大するために、合法的であれば何をしてもいいことになる。中国の新疆ウイグル自治区で監視下にある人々の労働から収益を得たり、香港市民に味方する従業員を解雇することも、湖を産業廃棄物で汚染したり、従業員に搾取的な労働を強要するのと同じくらいには容認されてしまう。
だが、これだけでは説明がつかない部分もある。NBAは上場企業ですらない。ブルームバーグは株式会社ではないが、それでも中国の大富豪のスキャンダル報道から手を引いた。
社会通念の影響があることは確かだろう。これまで長いこと、ビジネスや貿易の場で中国の人権問題を持ち出すことは難しかった。挑発的であり、厄介なことと見なされた。
アメリカの危機管理会社(元政府高官がトップにいることも多い)は顧客に対し、できるだけ中国共産党と親密な関係を築くように助言している。オバマ前政権の国家安全保障会議でアジア上級部長を務めたエバン・メディロスは最近、在中国・米国商工会議所向けのプレゼンテーションで、「習近平(シー・チンピン)国家主席の最優先目標を支持」し、「中国共産党の諸機関との関係を強化する」ことを提唱した。
米企業の幹部は訪中しても、中国のほんの一部しか見ていない。上海で超高級ホテルに滞在し、飲食の接待を受ける。中国側は無防備な客人を、長年培った作法でもてなす。米企業幹部は「中国に1週間滞在したばかりだが、あの国こそ未来だ」などと、したり顔でのたまう。ジョークとしか思えない。
中国こそ経済の未来だという思い込みには、長い歴史がある。アメリカ人は19世紀から、数億の顧客がいる中国に憧れてきた。その傾向は、中国が経済面で大きく台頭した過去20年の間に強まってきた。
たとえ中国で外国企業が政治や安全保障を理由に締め出されても、アメリカ人の夢はしぼまない。それでも世界各地で権力へのアクセスを金で手に入れることに慣れている彼らは、中国政府にも取り入ろうとする。