最新記事

中国

北京と香港が迎えた中国建国70周年、習近平は「人類共通の未来」を語った

China’s Show for the World

2019年10月7日(月)11時50分
ジョシュア・キーティング

北京(写真)では建国70周年を盛大に祝う一方、香港では激しい衝突が起きた JASON LEE-REUTERS

<10月1日に国内で見られた全く異なる表情も、実は似た者同士である中国とアメリカとの対立も、時代の大いなる皮肉。中国の姿勢には、世界で一定の支持がある>

中国が建国70周年を迎えた10月1日、北京と香港は非常に異なる様相を見せた。

北京では、毛沢東のような人民服を着た習近平(シー・チンピン)国家主席が見守るなか、兵士1万5000人による軍事パレードを実施。市民パレードも行われ、中国の偉大な過去と明るい未来をテーマにした山車と共に10万人が行進した(この日を青空で迎えようと工場の稼働停止などの対策が取られたが、残念ながらスモッグは完全には消えなかった)。

一方、香港では権力が別の形で発動された。17週目に突入したデモの参加者に、香港警察が実弾を発射。一連のデモで実弾による初めての負傷者が出た。

だが習はこの日の演説で、香港については一般論として触れただけだった。「中国が前進するに当たり平和的な再統一と一国二制度の原則を支持し、香港とマカオの繁栄と安定を維持し、中台関係の平和的発展を促進し、完全な統一に向けた努力を続ける必要がある」

外から見れば、習の見方は理解し難い部分がある。中国共産党の直接支配が及ばない地域で暮らす「中国の子供たち」は、その支配下に置かれたいとは全く思っていないからだ。現に逃亡犯条例改正案への抗議に端を発した香港のデモは、民主化と高度な自治を求める運動へと発展している。

演説で中国の「平和的台頭」を強調しつつ、習は「国際社会と協力し、人類共通の未来に向けて邁進する」と述べた。中国が経済発展を遂げてきたのは確かだろう。だがそれよりも世界に強い印象を残すのは、香港での衝突や、ITを駆使した新疆ウイグル自治区の監視社会化だ。

世界の受け止めも二分

「人類共通の未来」は世界の共感を得られるのか。国家主権の重視や、欧米とは異なる経済・政治の道を歩む中国の姿勢には一定の支持がある。特に経済・政治の自由化の恩恵を受けにくい国々は支持する傾向が強い。

米ピュー・リサーチセンターの香港デモ前の調査によれば、中国は欧米や東アジアでは不人気だが、東欧、中東、アフリカ、中南米では印象がよかった。

この差は、中国による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒大量拘禁への反応にも表れている。7月の国連人権理事会では、EU諸国や日本など加盟22カ国が人権侵害の停止を求める共同声明を発表した。一方、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、以前はウイグル人に対する中国の弾圧を「人類の恥」「大量虐殺のよう」と非難していたものの、7月に訪中し、習に経済協力を呼び掛けた際には批判的な態度を一変させた。イスラム圏の他の国々も慎重な姿勢を保っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バイデン米大統領、日鉄のUSスチール買収阻止 安保

ワールド

トランプ氏、10日に量刑言い渡し 不倫口止め事件 

ビジネス

米国株式市場=反発、ハイテク株高い USスチール売

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、週間では1カ月ぶりの大幅な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを拒否したのか?...「アンチ東大」の思想と歴史
  • 2
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...ミサイル直撃で建物が吹き飛ぶ瞬間映像
  • 3
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡...池井戸潤の『俺たちの箱根駅伝』を超える実話
  • 4
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 5
    韓国の捜査機関、ユン大統領の拘束執行を中止 警護庁…
  • 6
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 7
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 8
    中高年は、運動しないと「思考力」「ストレス耐性」…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    「これが育児のリアル」疲労困憊の新米ママが見せた…
  • 1
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も助けず携帯で撮影した」事件がえぐり出すNYの恥部
  • 2
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 3
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強みは『個性』。そこを僕らも大切にしたい」
  • 4
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 7
    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…
  • 8
    「弾薬庫で火災と爆発」ロシア最大の軍事演習場を複…
  • 9
    スターバックスのレシートが示す現実...たった3年で…
  • 10
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中