トランプのゼレンスキー大統領との電話記録、ウクライナに痛手 勝者はロシアか
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トランプ米大統領は、来年の大統領選での政敵追及のため、ウクライナのゼレンスキー大統領に協力するよう圧力をかけたとされる問題で、ゼレンスキー氏と7月に行った電話会談の記録を公開した。写真は国連総会の機会に会談したゼレンスキー氏(左)とトランプ氏。9月25日、ニューヨークで撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)
トランプ米大統領は25日、来年の大統領選での政敵追及のため、ウクライナのゼレンスキー大統領に協力するよう圧力をかけたとされる問題で、ゼレンスキー氏と7月に行った電話会談の記録を公開した。
これにより米国内の政治的緊張の激化は必至だ。しかし、それ以上に、ゼレンスキー氏が受けた外交的な痛手は深刻で、破滅的な悪影響をもたらしている。明らかになったゼレンスキー氏の発言は、米野党・民主党を怒らせ、ウクライナが必要としている米国からの超党派の支援を危うくするだけでなく、電話会談で批判されたフランスやドイツのいら立ちも避けられないからだ。
頼みの欧米支援を危うくする恐れ
ウクライナは、ロシアが2014年にクリミア半島を編入し、ウクライナ東部の武装勢力を支援して以来、この隣国と抜き差しならない対立関係にある。そのため、国際社会でできる限り友好国を確保する必要に迫られている。
特に米国からの支援や外交的な手助けに大きく依存。フランスやドイツなどの欧州諸国は、停滞したままのウクライナ東部の和平協議を進展させようと努力を続けてくれている。
ところが今回の電話会談記録が判明した結果、ウクライナが有害な国家だとみなされかねない、と同国のシンクタンク、ニュー・ヨーロッパ・センターのアルヨナ・ゲトマンチュク氏は指摘する。
16年の米大統領選への介入疑惑で広がったロシアへの嫌悪感ほどではないにしろ、ウクライナの印象もかなりひどくなりそうだ、と同氏は付け加えた。
ゼレンスキー氏にとって何とも間の悪いことに、今回の問題はウクライナ東部紛争終結のための和平協議の一部再開に自らが積極的になっていた、まさにその時に発覚した。こうした取り組みには、米国や欧州の外交的な協力が欠かせない。
しかし会談記録によると、ゼレンスキー氏は、バイデン前米副大統領の息子が役員を務めていたウクライナ企業への捜査再開をトランプ氏に約束したほか、フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が対ロシア制裁実施を後押ししてくれないと不満を口にしていた。
またゼレンスキー氏は、米民主党政権時代の駐ウクライナ大使が「良くない外交官だった」とのトランプ氏の主張に同意していた。