トランプのゼレンスキー大統領との電話記録、ウクライナに痛手 勝者はロシアか
必死の弁明
ブルーベイ・アセット・マネジメントのシニア新興国市場ストラテジスト、ティモシー・アッシュ氏は「ゼレンスキー氏は、米国の元大使やメルケル氏や欧州諸国を足蹴にした上に、バイデン氏に対するトランプ氏の政治工作に手を貸した。これは良い印象はもたらさない。まるでトランプ氏に取り入っているように見受けられる」と指摘した。
ゼレンスキー氏がウクライナを腐敗や汚職のない完全に透明な民主主義国家に生まれ変わらせるという公約を達成してくれるだろう、という世界の投資家の期待とは裏腹に、アッシュ氏のコメントからはそうした道筋の実現に懐疑的な見方が広がっていることがうかがえる。
ゼレンスキー氏はこれまで、ウクライナが電話会談記録を公開するべきだとの声に抵抗してきた。25日にはニューヨークで記者団に対して、トランプ氏が自身の発言だけを開示するとばかり思っていたと語り、独立国家の首脳同士の詳しいやり取りは表に出すべきでない時もあるはずだと強調した。
ゼレンスキー氏はまた、バイデン氏の息子に関する捜査の詳細は知らなかったと弁明するとともに、トランプ氏からの要請があったとしてもそれは世界中の首脳との会話でよくあるケースの1つだと指摘。ウクライナの新検事総長は全ての事案を政治の干渉を受けずに捜査してほしいと付け加えた。
一方で、独仏との関係維持にも気を配り、メルケル氏とマクロン氏の助力には感謝しているなどとし、「私はだれの悪口も一切言いたくない。われわれに手を差し伸べてくれる全ての人をありがたいと思う」とゼレンスキー氏は話した。
ほくそ笑むロシア
それでもウクライナ国内からは、同国は既にダメージを被っているとの声が聞かれる。
シンクタンク、ペンタのボロディミル・フェセンコ氏は「当然ながら欧州の首脳、特にメルケル氏との関係で状況は悪化するだろう。(ホワイトハウスが用意した電話会談記録の要約に)直接的な批判はなかったとはいえ、ゼレンスキー氏の発言の文脈や調子からは、トランプ氏にメルケル氏への不満をぶつけたように聞こえる」と話した。
今回の問題でウクライナの対米関係が損なわれ、米国からの軍事支援などに支障が出てくる可能性があり、それがロシアに利することを心配する向きもある。
ポロシェンコ前大統領の派閥に属するある議員は、ウクライナにとって単独でロシアと向き合わなければならない恐れが出てくるという大変危険な事態で、ロシアは必ずこの好機を活用するだろうと警戒感をあらわにした。
「トランプ氏が事実上ゼレンスキー氏にバイデン氏の弱点探しを依頼し、ゼレンスキー氏が同意したように見える。バイデン氏がウクライナの改革に全力を注いだ後で、ゼレンスキー氏が背後からバイデン氏を刺して、米国の元大使やメルケル氏も道連れにした」と、ブルーベイ・アセットのアッシュ氏はいう。そして、「勝者は誰かと言えば、(ロシア大統領の)プーチン氏だ」と断言した。
[キエフ/モスクワ ロイター]
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