最新記事

香港デモ

「できることなら辞任する」香港行政長官キャリー・ラムが語った本音とは?

2019年9月4日(水)10時40分

体面を気にする中国政府

林鄭長官は録音された発言の口調が公の場で見せる強面のイメージと異なり、3カ月に及ぶ抗議デモの影響が自身のプライベートな生活にも及んでいると明かした際には声を詰まらせる場面もあった。

林鄭氏は「香港にこのような大きな参事を引き起こしたことは行政長官として許されない」と吐露した。

また同氏は、中国政府の指導者は抗議デモ鎮圧のため香港に軍隊を送れば体面を損なうことを理解していると指摘。

「中国政府は軍介入の代償は大きすぎると分かっており、国際的な体面に注意を払っている。長い時間を掛けて国際社会で、単なる経済大国ではなく責任ある経済大国としての体面を築き、一定の発言力を得てきた。だから、こうしたプラスの変化を全て投げ捨てることが政策に含まれていないのは明白だ」と述べた。

ただ同氏は、抗議デモにより観光客の減少や新規株式公開(IPO)を含めた資本流入の減少などの経済的な痛みがあったとしても、中国政府はじっくりと構えて乗り切るつもりだとの見解も示した。

大きな悲しみ

林鄭氏は、香港における法の支配および安定回復の重要性や、政府によるメッセージ発信に向けた取り組みの必要性にも言及。録音では最後に拍手が起きている。

同氏は今は「自己憐憫」に浸っているときではないとしつつ、抗議デモと対峙している警察官への圧力を弱めたり、「香港政府、特に私自身に強い怒りを向けている多数の平和的な反政府活動家に納得してもらえるような」政治的解決策を提示することはできないことに、深い苛立ちを見せた。

「このような緊張状態を緩和する政治的立場を提示すること」は自分は不可能で、このことが「大きな悲しみ」の原因になっているという。

同氏は今回の騒乱の影響が自身の日常生活にも及んでいると嘆き、「最近は外出がとても困難だ。通りに出ることも、ショッピングモールに行くことも、ヘアサロンに行くこともできない。私がどこにいるかがソーシャルメディアで広まるので、何もできない」と語り、公の場に出る場合には「黒いTシャツと黒い覆面の若者の群集が待ち受けていることが予想される」と明かした。

行政長官就任直後は支持率が比較的高かった林鄭氏だが、パブリック・オピニオン・リサーチ・インスティテュートを運営するロバート・チャン氏によると、現在の支持率は1997年の香港返還以降の4人の行政長官で最も低い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グリーンランドに「フリーダムシティ」構想、米ハイテ

ワールド

焦点:「化粧品と性玩具」の小包が連続爆発、欧州襲う

ワールド

米とウクライナ、鉱物資源アクセス巡り協議 打開困難

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ619ドル高 波乱続くとの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助けを求める目」とその結末
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 6
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク…
  • 7
    ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税.…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    逃げる犬をしつこく追い回す男...しかしその「理由」…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中