「できることなら辞任する」香港行政長官キャリー・ラムが語った本音とは?
体面を気にする中国政府
林鄭長官は録音された発言の口調が公の場で見せる強面のイメージと異なり、3カ月に及ぶ抗議デモの影響が自身のプライベートな生活にも及んでいると明かした際には声を詰まらせる場面もあった。
林鄭氏は「香港にこのような大きな参事を引き起こしたことは行政長官として許されない」と吐露した。
また同氏は、中国政府の指導者は抗議デモ鎮圧のため香港に軍隊を送れば体面を損なうことを理解していると指摘。
「中国政府は軍介入の代償は大きすぎると分かっており、国際的な体面に注意を払っている。長い時間を掛けて国際社会で、単なる経済大国ではなく責任ある経済大国としての体面を築き、一定の発言力を得てきた。だから、こうしたプラスの変化を全て投げ捨てることが政策に含まれていないのは明白だ」と述べた。
ただ同氏は、抗議デモにより観光客の減少や新規株式公開(IPO)を含めた資本流入の減少などの経済的な痛みがあったとしても、中国政府はじっくりと構えて乗り切るつもりだとの見解も示した。
大きな悲しみ
林鄭氏は、香港における法の支配および安定回復の重要性や、政府によるメッセージ発信に向けた取り組みの必要性にも言及。録音では最後に拍手が起きている。
同氏は今は「自己憐憫」に浸っているときではないとしつつ、抗議デモと対峙している警察官への圧力を弱めたり、「香港政府、特に私自身に強い怒りを向けている多数の平和的な反政府活動家に納得してもらえるような」政治的解決策を提示することはできないことに、深い苛立ちを見せた。
「このような緊張状態を緩和する政治的立場を提示すること」は自分は不可能で、このことが「大きな悲しみ」の原因になっているという。
同氏は今回の騒乱の影響が自身の日常生活にも及んでいると嘆き、「最近は外出がとても困難だ。通りに出ることも、ショッピングモールに行くことも、ヘアサロンに行くこともできない。私がどこにいるかがソーシャルメディアで広まるので、何もできない」と語り、公の場に出る場合には「黒いTシャツと黒い覆面の若者の群集が待ち受けていることが予想される」と明かした。
行政長官就任直後は支持率が比較的高かった林鄭氏だが、パブリック・オピニオン・リサーチ・インスティテュートを運営するロバート・チャン氏によると、現在の支持率は1997年の香港返還以降の4人の行政長官で最も低い。