最新記事

香港デモ

「中国政府に辞任申し出たことは一度もない」 香港行政長官、辞任発言の報道に遺憾

2019年9月3日(火)18時35分

香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(写真)は、政治的混乱を終わらせるために中国政府に辞任を申し出たことは一度もないと述べた。写真は香港で撮影(2019年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は3日、政治的混乱を終わらせるために中国政府に辞任を申し出たことは一度もないと述べた。

ロイターは先に、先週開かれた実業家グループとの非公開会合で林鄭氏が、香港の政治危機を巡り「言い訳のできない大混乱」を引き起こしたとし、選択肢があるなら辞任すると発言したと報じていた。

この報道について同氏はテレビ放送された記者会見で、辞任を検討したことは一度もないと強調。中国政府は香港政府が中国の介入なしに危機を解決できると考えていると述べた。

「辞任の申し出を検討したことなどない。辞任するかしないかは私自身の選択だ」と語った。

「過去3カ月間、香港を助けるために私と私のチームがとどまるべきだと自分自身に言い聞かせてきた。この理由から、より簡単な道である辞任という選択肢を自分に与えていない」と説明した。

また、私的会合での発言内容がメディアに漏れたことは非常に遺憾だと付け加えた。

非公開会合での録音によると、行政長官は香港の混乱について、自身によって解決する余地は「非常に限られている」としていたが、3日の会見では、香港政府が混乱を終結させることが可能だとの見解を示した。

「私がチームを率いて香港がこのジレンマから抜け出すのを手助けすることができると考えている」とし、「それが可能だという自信は今でもある」と語った。また「(香港)政府が状況に対処できる能力があると中央政府は引き続きみている」と述べた。

香港では、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に端を発する大規模デモが6月から続いており、収束の兆しが見えていない。今週は週初から2日連続で、数千人の学生が授業を放棄し、五大要求を訴えるデモに参加している。

五大要求とは、逃亡犯条例改正案の撤回、抗議活動の暴動認定の取り消し、逮捕された抗議者の釈放、警察の対応を調査する独立委員会の設置、直接選挙の実現の5つ。

香港の法律で、暴動罪は禁固10年に処せられる。

香港マカオ事務弁公室の報道官は3日、香港の普通選挙権を望む者は何も得るものがない、と指摘した。

ラム長官は、デモ隊との対話に応じる姿勢を示しながらも、デモ隊の要求には譲歩する姿勢をみせていない。

ある大学生は「ラム氏が辞任しようがしまいが、関係ない。どうせ行政長官は中央政府から任命される。問題は、ラム氏が五大要求への回答を拒んでいることだ。彼女は無責任なリーダーだ」と述べた。

*内容を追加しました。

[香港 3日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20190910issue_cover200.jpg
※9月10日号(9月3日発売)は、「プーチン2020」特集。領土問題で日本をあしらうプーチン。来年に迫った米大統領選にも「アジトプロップ」作戦を仕掛けようとしている。「プーチン永久政権」の次なる標的と世界戦略は? プーチンvs.アメリカの最前線を追う。



20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中