最新記事

ブラジル

アマゾン火災で世界が批判するブラジル大統領、国内では6割が支持の理由は?

2019年9月2日(月)09時07分

ブラジルのボルソナロ大統領は、アマゾン森林火災への対応をめぐり、国際舞台では欧州の指導者たちや環境保護グループから激しい批判を浴びている。しかし、国内で大統領の対応の鈍さに怒る国民は少ない。写真はブラジリアで撮影(2019年 ロイター/Adriano Machado)

ブラジルのボルソナロ大統領は、アマゾン森林火災への対応をめぐり、国際舞台では欧州の指導者たちや環境保護グループから激しい批判を浴びている。しかし、国内で大統領の対応の鈍さに怒る国民は少ない。

熱帯雨林の保護と開発のバランスを巡り、国民の多くは、外国の干渉に対する大統領の嫌悪感を共有している。アマゾンは国内では重要な国家資産と受け止められているが、国際社会では気候変動への決定的な防波堤と見なされている。

ただ、政治家やアナリストによると、ブラジルに対する通商制裁や不買運動が広がって、ただでさえ減速している景気に悪影響が出始めれば、世論も変わる可能性があるという。

環境保護主義者たちは、森林火災の大半は不動産投機家や牧場主らが牧草地を広げるため違法に火を放ったもので、過度な環境保護に対するボルソナロ氏の批判に後押しされたことが、こうした行動を招いたと訴えている。

ボルソナロ氏は火災が故意に起こされたという主張を否定し、特に欧州諸国に対し、介入しないよう繰り返し要求。消火活動の資金や機材が不足しているにもかかわらず、国際支援を拒絶し、フランスのマクロン大統領と舌戦を繰り広げている。

ブラジリアのコンサルタント会社キャピタル・ポリティコの責任者、レオナルド・バレット氏によると、今週実施した世論調査ではボルソナロ政権が「非常に良くやっている」、「良い」、「普通」とする回答は合わせて約60%に上り、国民が現時点では大統領を好意的に見ていることが明らかになった。

ロビイストでブラジル政府の元通商担当高官だったウェルバー・バラル氏は、「アマゾンの支配権を外国人に奪われかねないとのボルソナロ氏のナショナリズム的思考のために、皮肉にも、森林火災は同氏の支持率を上げたかもしれない」と述べた。

ブラジル国民の多くは、アマゾンには金からニオブに至る膨大な鉱物資源が眠っており、それらが諸外国から狙われていると信じている。

この考え方はブラジル軍部でも根強く、アマゾンでの外国人のいかなる役割に対しても、たとえ環境や先住民族を保護しようとする非政府組織の活動であっても、疑心を生む結果になっている。

軍部出身のボルソナル氏は、議会で政治家たちや一部の味方陣営からも、消火活動が遅すぎるうえにマクロン大統領との中傷合戦で時間を浪費していると批判されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

比大統領「犯罪計画見過ごせず」、当局が脅迫で副大統

ビジネス

トランプ氏、ガス輸出・石油掘削促進 就任直後に発表

ビジネス

トタルエナジーズがアダニとの事業停止、「米捜査知ら

ワールド

ロシア、ウクライナ停戦で次期米政権に期待か ウォル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中