アマゾン火災で世界が批判するブラジル大統領、国内では6割が支持の理由は?
ブラジルのボルソナロ大統領は、アマゾン森林火災への対応をめぐり、国際舞台では欧州の指導者たちや環境保護グループから激しい批判を浴びている。しかし、国内で大統領の対応の鈍さに怒る国民は少ない。写真はブラジリアで撮影(2019年 ロイター/Adriano Machado)
ブラジルのボルソナロ大統領は、アマゾン森林火災への対応をめぐり、国際舞台では欧州の指導者たちや環境保護グループから激しい批判を浴びている。しかし、国内で大統領の対応の鈍さに怒る国民は少ない。
熱帯雨林の保護と開発のバランスを巡り、国民の多くは、外国の干渉に対する大統領の嫌悪感を共有している。アマゾンは国内では重要な国家資産と受け止められているが、国際社会では気候変動への決定的な防波堤と見なされている。
ただ、政治家やアナリストによると、ブラジルに対する通商制裁や不買運動が広がって、ただでさえ減速している景気に悪影響が出始めれば、世論も変わる可能性があるという。
環境保護主義者たちは、森林火災の大半は不動産投機家や牧場主らが牧草地を広げるため違法に火を放ったもので、過度な環境保護に対するボルソナロ氏の批判に後押しされたことが、こうした行動を招いたと訴えている。
ボルソナロ氏は火災が故意に起こされたという主張を否定し、特に欧州諸国に対し、介入しないよう繰り返し要求。消火活動の資金や機材が不足しているにもかかわらず、国際支援を拒絶し、フランスのマクロン大統領と舌戦を繰り広げている。
ブラジリアのコンサルタント会社キャピタル・ポリティコの責任者、レオナルド・バレット氏によると、今週実施した世論調査ではボルソナロ政権が「非常に良くやっている」、「良い」、「普通」とする回答は合わせて約60%に上り、国民が現時点では大統領を好意的に見ていることが明らかになった。
ロビイストでブラジル政府の元通商担当高官だったウェルバー・バラル氏は、「アマゾンの支配権を外国人に奪われかねないとのボルソナロ氏のナショナリズム的思考のために、皮肉にも、森林火災は同氏の支持率を上げたかもしれない」と述べた。
ブラジル国民の多くは、アマゾンには金からニオブに至る膨大な鉱物資源が眠っており、それらが諸外国から狙われていると信じている。
この考え方はブラジル軍部でも根強く、アマゾンでの外国人のいかなる役割に対しても、たとえ環境や先住民族を保護しようとする非政府組織の活動であっても、疑心を生む結果になっている。
軍部出身のボルソナル氏は、議会で政治家たちや一部の味方陣営からも、消火活動が遅すぎるうえにマクロン大統領との中傷合戦で時間を浪費していると批判されている。