ミャンマー人権侵害は家庭でも「骨が折れるほど妻を殴る」

米国の資金で実施された「人口・保健調査」によれば、ミャンマーでは少なくとも5人に1人の女性が配偶者から暴力を受けている。家庭内暴力を受けた女性、息子と撮影に応じた。8月7日、エーヤワディーにある村で撮影(2019年 ロイター/Ann Wang)
ミャンマー南部の自宅で1歳の娘をあやしながら、Nu Nu Ayeさんは、夫が自分を殴打した理由を語った。「飼っているおんどりの面倒を見なかったため」である。性交の求めにも応じなかった。
村の長老が仲介した話し合いの場で、夫は「必要に応じて」また妻を殴ると言った。
「彼の暴行はその後さらにひどくなった」と、Nu Nu Ayeさんは語る。ついには、彼女が寝ている間に絞め殺そうとするところまでいった。
米国の資金で実施された「人口・保健調査」によれば、ミャンマーでは少なくとも5人に1人の女性が配偶者から暴力を受けている。複数の人権活動家は、報告されていない事例も多く、この数字も過小評価だとする。家庭内暴力(DV)を禁止する明確な法律はない。
Nu Nu Ayeさんの証言についてロイターは裏付けを取れていないが、彼女のような事例は地元の有力者に仲介を頼むのが普通であり、配偶者による暴力はたいていの場合、私的な問題とみなされる。
ノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏率いる現政権は、女性を暴力から守る法律の制定に取り組んでいる。人権問題に取り組む活動家らは、DVを含めた暴力から女性を保護できるようになると期待している。
だが、法案は2013年に提案されたものの、今も草案の段階で足踏みしている。その規定について賛否が分かれ、夫婦間のレイプを違法とすることなどについて見直しが行われている。
立法化の遅れに人権活動家らは焦燥感を募らせている。ミャンマーの文民政府は軍部と権限を分け合う複雑な制度のもとで統治に当たっており、こうした明らかに文民政府の管轄下にある分野でさえ、改革は遅々として進まず、失望を招いている。
「法律の制定に十分すぎるほど時間がかかっているが、まだ待たされている」と、人権活動家の1人、Nang Phyu Phyu Lin氏は言う。
ロイターはミャンマーの社会福祉・再定住省に質問を送ったが返答はない。電話でもコメントを求めたが、回答を得られていない。