燃え上がる日韓対立、安倍の「圧力外交」は初心者レベル
Japan Started a War It Wasn’t Ready to Fight
中長期的には、日本企業にとっての懸念材料は、サムスンはじめ韓国企業が調達先を日本からより「信頼できる」ソースに切り替えるかどうか、だ。韓国政府は8月5日、日本への輸入依存を減らすため、研究開発に640億ドルを投じると発表した。だが研究開発には膨大な時間と資金がかかるため、韓国企業は日本の措置により実際にどれだけ輸出が制限されるかを冷静に見極めて、「脱日本」を進めるかどうかを決めるだろうと、専門家はみる。
不買運動や日本離れなど数々のリスクがあるにもかかわらず、安倍は譲歩する構えを見せていない。韓国の南官杓(ナム・グァンピョ)駐日大使を外務省に呼びつけた日本の河野太郎外相は、元徴用工問題で日韓が共同で財団を設立するという解決案を説明する南をさえぎり、日本政府は既にこの案を拒否したのに、「知らないフリをして、改めて提案するのは、極めて無礼だ」と、テレビカメラの前で叱りつけた。
河野の叱責のせいで、強硬に出たのは日本政府だという印象が強まった。南大使は文大統領の側近で、新たに就任した韓国大使として6月に朝日新聞の取材を受け、関係冷え込みを避けるために最善を尽くすのは外交官の務めであり、日韓関係の改善に尽力したいと穏やかに語った人物だ。
アメリカの仲裁は形だけ
皮肉にも、こじれた関係を立て直す仲介役として期待を託されたのがトランプ政権だ。だが、日韓両国を相次いで訪問したジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は持ち前の強硬姿勢を引っ込め、この問題には口出しを渋った。マイク・ポンペオ米国務長官も、ASEAN地域フォーラム出席のために訪問したタイの首都バンコクで日米韓外相会談を行なったものの、形ばかりの仲介にとどまり、河野と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の歩み寄りはかなわなかった。
次の展開として、韓国が日本と2016年に締結した「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を破棄すれば、日本は北朝鮮がミサイルを発射しても韓国の情報は直接受け取れなくなるだけでなく、日韓の連携を前提としたアメリカのアジア太平洋戦略も深刻な痛手を被るだろう。それでも今のところアメリカは、日韓双方に「反省」を促すにとどまり、踏み込んだ仲裁を避けている。
参院選で控えめな目標ラインを大幅に上回る議席を確保し、ホッとしたばかりの安倍だが、外交では厄介な状況に直面している。北朝鮮の核問題をめぐる交渉では事実上「蚊帳の外」に置かれ、北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)とは、拉致問題の解決など面会の条件をすべて白紙にして会談を目指すも相手にされず、米政府からは、ホルムズ海峡などの航行の安全確保のための「有志連合」参加と、日米貿易交渉の早期妥結に向け、やいのやいのと圧力をかけられている。
おまけに、中国とロシアが狙い澄ましたように手を組み、日米韓同盟に揺さぶりをかけている。中ロは日本海と東シナ海で合同演習を実施。韓国が実効支配し、日本が領有権を主張する竹島の領空をロシア軍機が侵犯した。次は、日本が支配し、中国が領有権を主張している東シナ海の尖閣諸島でも挑発行動を取りかねないと警戒する声もある。強気の外交には危うさがつきものだ。お人好し外交は実は得策であり、ビジネスに政治を持ち込むのは邪道だったと、安倍は後悔することになるかもしれない。
(翻訳:森美歩)
*筆者は、東京在住のジャーナリスト。15年以上、日本の経済と金融市場をウォッチしてきた。
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