燃え上がる日韓対立、安倍の「圧力外交」は初心者レベル
Japan Started a War It Wasn’t Ready to Fight
日本政府に近い筋によれば、安倍は徴用工問題に苛立ちを募らせており、韓国に譲歩を迫るための武器を探していた。そして、しばらく前から問題視されていた対韓輸出の問題に目をつけると、経済産業省の管轄だったこの問題を、大きな力を持つ首相官邸が引き継いだ。その結果は、芳しくない。
安倍の行動は、貿易を政治の武器に使うドナルド・トランプ米大統領のやり方と様々な意味で似ていると言われる。7月の一連の政府発表が、声明とその出し直しと戦略変更のミックスである点、まさにトランプ流だ。
こうした類の発表を行う際には、少なくとも自らの主張を裏づける証拠や、メディアや外交関係者への背景説明、それに最も重要なこととして、何が起こっているのかについての明確で一貫性のある説明が必要だ。一貫性を保つため、情報はすべて一つのオフィスを通して発表し、コメントは一人の代表者が行うべきだ。最後に、予想外の展開(その筆頭が日本製品の不買運動だろう)に備える緊急対応策も用意しておく必要がある。
だが今回の日本政府の対応はこの基本を押さえておらず、政府当局者たちは矛盾した声明や曖昧な発言を繰り返した。
徴用工判決の報復と認めた安倍
日本政府の基本的な主張は、きわめて実務的なものだ。日本側としては、どの輸出国にも認められている権利として、サプライヤに「今後は個別の出荷ごとに政府の承認が必要になる」と通告しているのだと説明ができる。既に(アメリカと並ぶ)最大の貿易相手国である中国に対しても同じシステムを導入しているが、明らかな悪影響はみられないことも説明できたはずだ。中国も、メモリーチップの生産が盛んな台湾も、日本のホワイト国リストには含まれていない。
かなりの反発を想定して、備えもしておくべきだった。サムスン電子の売上高は、韓国のGDPの約15%を占めている。主要事業に脅威が迫れば、どんな政府だって抵抗するはずだ。だが韓国政府の反応に直面して、日本政府は揺らいだ。世耕弘成経済産業相は、輸出管理は国の安全保障のためだと技術的な側面を強調しているが、政権幹部は彼が否定している徴用工訴訟への報復疑惑を裏付けるような発言をしている。
菅義偉内閣官房長官は、輸出管理は「国の安全保障上の理由」だとしながらも、韓国が「20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)までに、徴用工問題について満足する解決策を示さなかったことで、信頼関係が著しく損なわれた」という考えをちらつかせた。
政府が安全保障上の理由を前面に出し始めた直後に、安倍は再び歴史問題を持ち出した。元徴用工訴訟の最高裁判決への対応で「韓国は国と国との約束を守らないことが明確になった。貿易管理において、守れないと思うのは当然ではないか」と報道番組で語ったのだ。
安倍と菅が、経済に及ぼすダメージの規模を予想していたかどうかは分からない。韓国で180以上の店舗を展開する日本のアパレル大手ユニクロは、韓国市民の不買運動の直撃を受け、デパートなどの売り場で売り上げが30%近く減少した。韓国では外国産ビールのなかで日本産ビールがダントツの人気を誇っていたが、スーパーやコンビニの棚から日本の銘柄が姿を消し、アサヒなど日本のビール大手は痛手を受けている。韓国の旅行会社によると、ここ数週間に日本を訪れる韓国人旅行者は半減したという。昨年日本を訪れた韓国人旅行者は750万人。今やインバウンド客は日本の景気底上げに大きく貢献しているが、なかでも韓国人客は最大のお得意さまだった。
「韓国は大げさに騒ぎすぎ」
日本は昨年、対韓輸出で200億ドル前後の黒字を計上した。これは対米輸出に次いで2番目に大きい貿易黒字だ。だが文大統領は8月2日にテレビで生中継された緊急国務会議で、「2度と日本に負けない」と宣言。日本と経済戦争に突入したとの認識を明確に示した。
一方で、日韓双方とも経済的な打撃は最小限で済むとの見方もある。韓国企業に引き続き購買意欲があればだが、日本政府の措置で輸入できなくなる物品はほとんどないと、米金融大手ゴールドマン・サックスは指摘する。また、貿易が活発なわりに、日本企業の韓国への直接投資は少なく、日本企業の中長期的なリスクは限定的だ。日本銀行の2018会計年度の統計によると、日本企業の韓国向け投資は、グローバルな対外投資の2.3%を占めるにすぎず、対米投資のおよそ10分の1にすぎない。
日本の財界は日韓の摩擦について沈黙しており、潜在的なコストにもかかわらず、安倍政権の取った措置を概ね支持しているようだ。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は、経済界は日韓関係の早期の「正常化」を望んでいると、述べている。ある財界人は個人的な見解として、日本が先に強硬姿勢を取ったわけではないと語った。「韓国は大げさに騒ぎ立て、世界経済に与える影響について不正確な発言をしている」