インドネシア首都移転先、発表1日で活断層や森林火災など問題続出 政府内からも疑問の声
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、同国の首都をカリマンタン島・東カリマンタン州のパンジャム・パサール・ウタラ地方北部とクタイ・カルタヌガラ地方の一部で構成する地域に移転すると発表した。写真はスモッグに覆われたジャカルタ市内(Antara Foto Agency/REUTERS)
<2期目に入った大統領が突然スケジュールを発表した首都移転。当初明かされなかった具体的な移転先が公表されたが──>
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は26日、首都ジャカルタの大統領官邸で記者会見し、首都移転問題で先にカリマンタン島とだけ明らかにしていた移転先に関して具体的な候補地の地名を挙げ、関係者の協力と理解を求めた。
それによると、カリマンタン島東カリマンタン州北ブナジャム・パセル県とクタイ・カルタヌガラ県にまたがる地域を新たな首都として2021年から建設に着手して、2024年に政府一部機能や議会の移転を開始したいとしている。
そして完全な首都移転はインドネシア独立100年となる2045年を目指すという。
首都移転問題は初代スカルノ大統領、長期独裁政権を維持したスハルト大統領、スシロ・バンバン・ヨドヨノ前大統領などがいずれも構想を明らかにしたものの実現していない経緯がある。
ジョコ・ウィドド政権では2019年4月に国家開発企画庁が首都移転構想を明らかにし、ジョコ・ウィドド大統領もカリマンタン島を主要候補地として何度か現地視察を繰り返した。
そして8月16日に議会で行った施政方針演説に当たる「国家演説」の中で具体的な地名を示さずに「首都をカリマンタン島に移転したい」との方針を示し、関係者の承認と協力を呼びかけたばかりだった。
用地買収や予算措置が不透明
ジョコ・ウィドド大統領は新首都移転候補地には約18万ヘクタールの政府所有の国有地があることから「用地収用は大きな問題ではない」として、候補地選定を見越して周辺地域ですでに進む地価高騰や土地の買い占めなどには影響を受けないとしている。
肝心の首都移転に関わる経費については「総額466兆ルピア(約3兆7000億円、2019年度国家予算比で約19%)」という巨額になると試算されている。政府はこのうち19%を国家予算から支出し、残りを民間企業の投資や官民連携の資金活用で賄うことを計画としているという。しかし、国家予算にしても財源が不明確で民間からの投資も具体的な方法、金額は依然不明という状況である。